大好きですッッ!

「暑いね」
「ああ」
「こんな中バスケとか地獄じゃない?」
「ああ」


たまたま水泳部は休みで、それで暇になって大輝の所に来てみれば取り敢えず体育館は蒸し暑い、汗臭い。その二点文句をぶっこいた私。プールは入っていれば涼しいしこんなに汗をかくこともない。まぁ、濡れるのは濡れますが。


「冷たいもの買ってこようか?」
「頼むわ」
「もちろんお金は取ります」
「ああ?」
「嘘だってっ」


相当参っているのか、いつもよりも覇気がないそのああ?に笑いながら大輝の頭に引っかかっているタオルを取る。


「何してんだ?」
「濡らしてきて上げる。そしたら少しは気持ちいいでしょ」


その代わりと言ってはなんだが、今日一度も使っていないスポーツタオルを大輝の頭の上に引っ掛ける。


「私の。使ったら?戻ってくるまで鞄見といてね」


鞄から財布を取り出して脇に挟んだ。それから大輝に手を軽く振って体育館を後にした。
体育館も暑いが外もかなり暑い。体育館は日差しが当たらない分まだマシだ。外を歩けば溶けてしまいそうなくらい暑い。


「今なら私、アイスの気持ちがわかるかもしれない」
「何馬鹿なこと言ってるんスか?」
「!黄瀬くん。だってほら、暑いからさ今日」
「確かに暑いっスよね。財布持って何か買い物っスか?」


後ろから肩を叩かれて振り向けば眩しい黄色。どうやら黄瀬くんも何か買いに行くみたいで財布を片手に持っている。


「大輝の飲み物とあとこれ、濡らそうかなぁと。少しは冷たくて気持ちいいでしょう?」
「あー、確かに。冷蔵庫とかにいれといたら気持ちいいだろうな」


とまぁ、会話しているわけだが何しろ彼はモデルさんなのだ。況してや今は俳優にまでなっている。そんな人と歩いていたら女性の視線が突き刺さるように痛い。


「黄瀬くんもすっかり有名人だな」
「ん〜、まぁ、そうなったみたいっスね」
「この、モテ男め」
「なーにいってんスか?っていででで!」
「おー、人の彼女口説くとはお前もやるようになったじゃねぇか黄瀬ぇ」


後ろを振り向く間もなく、黄瀬くんの頭にヘッドロックがかまされる。これができるのは彼も身長が高いからだ。全く、彼らには成長期の終わりがないのか、不思議でたまらない。いやもう流石に止まったと思うけれど。高校の時よりもさらに大きくなっているとさつきちゃんが言うのだから恐ろしい。


「いたたっ、違うんスよ!誤解っス!」
「ああ?うるせぇよ。てか暑い」
「てか大輝私の鞄は?」
「さつきが見てる」
「 ならいいけど」


自販機の前について炭酸飲料とスポーツ飲料のボタンをポチリと押す。スポーツ飲料の方を大輝に渡した。黄瀬くんはアイスティー。黄瀬くんは電話がかかってきて走って帰ってしまった。
私は黄瀬くんを見送ってから大輝をベンチに放置して少し小走りで水道の方に向かった。タオルを濡らすためだ。濡らしたそれを先程買った炭酸飲料に巻き付けて、大輝の元に向かった。


「ほい」
「つべてっ!」
「あはは!気持ちいいでしょ?」


ペットボトルごと大輝の頬にひっつければ大きな体を丸めて眉を顰めた。眉間に寄った皺をさわればその腕を捕まれ引き寄せられる。正直言って暑い。ロマンチックも雰囲気も何もないがただただ暑い。


「暑い」
「俺もだっつの。ていうかお前、おっぱいおっきくなったか?」
「バカ野郎。女の敵。そういうこと聞くなバカ。ハルに言いつけるよ」
「それはやめてくれ。で、変わったか?」
「…………わよ」
「あ?」
「BからCに変わったよ!」


ぶはっ、そんな笑いが頭上から聞こえて、恥ずかしくてもがけばそんなものお構いなしに大輝は私を抱きしめる。それでいつも喧嘩しても仲直りしてしまうのだから不思議だ。こう、大輝に抱きしめてもらうと落ち着く。


「ねー、大輝」
「んぁ?」
「何でもない」
「何だよ、言いたいことあるなら言え」
「えー、でもなぁ」
「ほら、」


肩を押され大輝から離れると目の前には大輝の顔。案外思っていた以上に真剣そうな顔をしていて真っ直ぐな視線から逃れるようにして顔を逸らしてしまった。頭の上に置かれた手。彼は人の頭を撫でるのが好きなのだろうか。


「俺は待ってるんだが。お前から言ってくれるの」
「…………何を」
「お前、付き合ってから一回も言ってくれねぇし」
「だから何を!」
「俺はお前のことが好きだぞ?お前は?」
「私も」
「ほら、いつもそこで終わる」
「は!?」


最近ちょっと元気がないと思ったらそういう訳だったの?私がその、好きとか言わないから?不安だったとか?そうだとしたら少し嬉しい。ヤキモチとは少し違うけど、それでも、そんなものじゃない?だったらすごく嬉しいのだが。


「不安だった。俺には言えなくて違うやつには言えるのかなぁとか」
「ふふ、そう言う事か。元気がなかったのは私が大輝に言わないからだ」
「元気なかったのか?まぁ、いいや。そんな感じだ」


案外可愛いところがあるなぁと思ってみたり。


「大輝!大好きですッッ!」


今更伝えるのもなんですが、好きなものは最後にとっておく人なんですよ、私。


「大輝は?」
「俺も…………好きだよッ」


ベンチから立ち上がった彼は腰を低くして私の唇に自分の唇を優しく押し当てた。


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ユキ様へ
こんな感じでよろしかったのでしょうか?甘いのか、途中でクチャっとしてしまいました……申し訳ございません。遅くなりました、よければお受け取りくださり

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