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警察に届けに出ると怒られてしまった。何で早く言わなかったのかと。
それはハルや大輝たちも同じで、無茶苦茶怒られた。


ちゃんと話して、話したら怒られて、さつきちゃんは再び泣き始めて、凛はしかめっ面で私にデコピンしてくるし、ハルは3日間口を聞いてくれなかった。



「……ご、ごめんなさい」


「あ?」


「……怒ってる?」


「当たり前だろうが。お前はアホか」


「大輝に言われたくない」


一人で警察に行くと言えばハルが大輝を呼んだ。凛は、と聞けば今日はどうやら忙しい日らしい。理由を聞けばジムと返してくれた。今日初の会話だったりする。

凛、体力とか体作りには徹底してるから。
で、結局行き着いたのが大輝だったわけだが。


「……なんで俺が」


「い、いいじゃん」


と、言ってはみたものの。最近、大輝が好きだと意識し始めてから、話しかけるのがなんだか恥ずかしい。
今まで父親的なノリで接していたのに。

大きくて、色黒くて、よく頭を撫でてくれる。これ父親要素。


「はぁ……」


「んだよ。俺が隣だってのに不満かよ」


「違う。迷惑かけてるなぁ、と……」


「そうだな」


「うん、そこはお世辞でもよかったから平気だとか言って欲しかったな」


そんな頷きながら即答しなくともいいじゃない。せめて少しだけでもいいから間を開けて欲しかった。
ショックとかではないし、自分でも本当にわかってるからいいんだけれど、やっぱりそうだよね。

……凹むなぁ。


「おい、何しょぼくれてんだよ」


「……別に」


「拗ねんなって」


あー、またそうやって撫でる。だからお父さんみたいだったのに……


「や、やめてっ」


意識しちゃうんだってば。
体ごとよけて、彼を睨みつければ眉を顰められてしまった。
今まで気持ち良さげにしていたからだろうか。いきなりなんだよ、的な。


「……何だよ」


「い、や。別に……本当、何でもないから」


「そうじゃなくて。何で避けるんだよ」


「気分。暑いし、べたついてるからやめといた方がいいよ」


なんて私は可愛くないのだろうか。
素直に照れたりすればいいのに、そういうのできなくて先に体が反応しちゃうし、取り繕う為の言葉なんてたくさん出てくる。


「そうか?」


「そうだよ。それに無闇やたらに女の子に触らない方がいいよ。……暑い。まだかなぁ、家」


そう、大会から本当に大事をとって5日、入院をさせられたのだ。その5日の間に体はどんどん鈍っていっているのだ。
灼熱の暑さの中で家から出る気にもなれず、プールに入ることも禁止されているために学校にも行っていないし、実質今回の外出が久しぶりの外出となる。
ダイエットと運動のために外に出たというわけだ。


「へーへー、あと5分もすれば家だろ」


「うん。ですねー」


「真面目に返してやってんのに何だよ、ほんとお前」


大輝といたいのに、いたくない。
矛盾してるのはわかってる。でも、恥ずかしいんだよ。恋する乙女がキレイになるのは、納得した。私は別に綺麗になってはないが、気にするのだ。その人の前だと。
今までそんな些細なこと、と気にしていなかった事でさえも気になってしまう。


「お前、本当に平気か?」


「え?」


「さっきから顔面、怖いぞ」


「うるさい」


大輝って意外にも人の事見てるんだよね。意外、にも。
さつきちゃんに聞いた話だと「俺に勝てるのは俺だけだ」とか言ってた人だからてっきり人間関係全然ダメなんだと思ってたけど……そうでもなかったのかな?高校一年生までのやんちゃだったのかもしれないけれど。


「なぁ」


「はぁい」


「ストーカー、なくなればの話だけどよ」


「うん」


君は顔面の色が黒いから照れてるのか照れていないのかわかんないけれど、照れてるってとっていいのだろうか。
横を向きながら頬を掻いている。


「夏祭り、一緒に行かねぇか」


「!?え、あ、うそ……冗談?」


「んなわけねぇだろ!!」


ああ、こっちに顔面を向けられたらわかる。微かに赤くなっている顔が。
そんなの見たら、私だって照れるじゃん。


「……か、考えとく」


「……おう」


あー、外は暑いけれど、まだ、彼の隣に立って歩いていたいな。



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