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「……何でいるの?」


「大ちゃんどうして……」


「さ、さつきがちゃんと着いてるか心配したんだよ!悪いか!?」


「私何回も来てるんだからわかってるよ。入ってはなかったけれど……」


「だぁぁぁあ!ほっといてくれ!」


「ふふ、何それ」


まさか起きているとは思っていなかったんじゃないのだろうか。そしたら起きててびっくり、みたいな。


「起きて平気なのかよ」


さつきちゃんの隣に椅子を持ってきて無遠慮に座った彼は、誰かが持ってきたかもわからない林檎を手に取った。
それから果物ナイフで皮を剥き始める。意外にも器用なことに驚いた。


「平気。それより何でそんな綺麗に剥けるの?」


「あ?んなもん、コイツの料理とか食ってたらいつか死ぬだろ。自分でやってるうちにこうなった」


「コイツって私!?酷い、大ちゃんなんてしーらない。今度からなんにも作ってあげないんだから」


「そっちの方が命に危険がねぇし、いいぜ」


酷い言われようだが、私にはどう仕様もないだろう。遊園地の時の大輝の反応を見て彼女の料理に手をつけてないのだから。
絶対無理だと思ってしまったし。


「ほら、食えよ」


「え、ナイフをフォーク代わりにしないでよ」


「怪我なんかしねぇよ。ほら、」


「……」


仕方無しに食べようか。食べるまでずっと持ってそうだし、ナイフ。

あ、美味しい。
……今のさりげなくあーんだったよね。恥ずかしいな。


「これ、誰が持ってきたんだろう。知ってる?」



「ううん、ごめん。知らないや」


大輝にも聞くがわからないと言われてしまった。
一体誰が持ってきてくれたんだろう。ハルではないだろうし、真琴か凛だな。もしくはバスケ部の方の誰かとか。


「げっ」


「ん?どうしたの?」


「これ持ってきたやつ……緑間だぜ?」


「お、どうした、緑間くん」


何でわかったの、そう聞く前に果物がたくさん入った籠から紙を剥がすと達筆でかつ綺麗な字で書かれていたそれ。



早く良くなれ

緑間


彼は医学部の方なのだからこうやって倒れてしまった人は案外心配なのかもしれない。なんか、緑間くんが優しいってレアな気がするのは私だけだろうか。


「意外だね。みどりん、こんなことしなさそうなのに」


「ていうかまず、お見舞いというものに来たんだね彼。そこに今驚いてる」


「た、確かに」


さつきちゃんの中で、緑間くんはどうなっているんだろう。結構一緒にいるんだよね。彼はそんな人なのかな。
堅物で……優しくない、とか。


「で、棗」


「んんー?」


「何でぶっ倒れたんだよ」


「……ハルたちが揃ってからでもいい?」


「あ、きーちゃんからライン来た。こっち向かってるって」


私の携帯には何通ものメールとライン。いつ起きているのかわからないし見てるかもわからないから送り続けてくれているんだろう。
どうやら今、連絡が来たようだ。ハルらもこっちに向かっているらしい。道が渋滞していて遅れるかもしれないとも書いてあった。


どうやら皆さんお揃いになるようです。


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