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勝ったのは私達水泳部チームだ。
惜しくも敗れたバスケ部チームは私たちにジュースを奢ってくれるということでみんなであの後買いに行ってくれた。
今はみんな海から戻りバスケ部はバスケを私達は水泳をしている。


本来の目的はこっちだからね。
それにナギ達もいるし和気あいあいと泳いでいます。


『はぁ……やっぱプールが一番』


体を仰向けにして水面に浮かんだ。
体に当たる生暖かい水が気持ちいい。海なんかよりも断然気持ちいい。


「もう、ホントプール好きだよね、ナツは」


『当たり前。ていうかハル、勝負して』


「は?」


『ほら、やるよー』


飛び込み台に立ちゴーグルをする。それを見て溜め息をついたハルはプールから上がり私と同じようにゴーグルをした。
ナギからのスタートを耳にした瞬間飛び込む。


昔は腹打ちが怖くて飛び込めなかった。懐かしい記憶に口角が上がる。
ああ、楽しい。泳ぐのが何よりも楽しい。


あの時の二人の泳ぎ。私の心が跳ね上がった。見てるのが辛いくらいの痺れが体を襲った。思わずあの後腕をさすると鳥肌が所狭しと並んでいた。正直気持ちが悪かった。


『っは!っ……』


「はぁっ……は……っ」


ターンをして、伸びて、かいて、息継ぎをして。
それでも憧れの兄には届かなくて。私が見ているものはいつも、兄、ハルの足だ。


「っ……はぁ、はぁ……」


『あー、あ。負け、ちゃったか……』


「何で、いきなり……」


『あの二人の泳ぎ見たでしょう?』


バックをするように背中から水に落ちる。飛沫がまい顔に飛んだ。


『綺麗とかじゃない、形無しだけれど……ゾクゾクする物があった』


「……ああ」


『いま全力でハルと泳ぎたかった。それじゃあ、ダメ?』


「いや、構わない。楽しかった」


『うん』


妹は兄の背中を見て育つ。でも、私の場合は兄の足の裏かもしれない。私はハルの足の裏を超えることはできるのだろうか。


それは、きっと……無理な話だ。


*****


『さて、晩御飯作ろうか。凛、ハル、真琴、よろしく』


どうやらバスケ部はまだ練習があるようだ。水泳部男子の方はもう、混む前に大浴場なるものを先に使わせてもらい、今から晩御飯を作ろうと思っている。


私はさつきちゃんとお風呂に入ると約束した為、入らなかった。


「おう」


「……鯖、あるか?」


「あ、鯖あるよ、ハル」


『真琴、教えなくていいから。……さて、今晩は当たり前のことながらカレー……の斜め上を行きまして、ハヤシライスを作ろうと思います』


「あ、カレーじゃないんだ」


真琴のその言葉にうなづき早速料理開始。とは言っても男性陣は戸惑うだろうと思いまして、サラダを作ってもらうことに。ハルはこっちを手伝ってもらっている。


『ハル』


「ん、ああ。はい」


『はい、ありがとう』


長い間一緒にいて培った私たちの無言のコミュニケーション能力はきっと誰にも負けやしないだろう。
切ってもらった野菜類と、ハヤシライスには使わない野菜をとってもらい油を敷いたフライパンに野菜を投げ込んだ。


『真琴ー、炒めといて』


「はーい」


『ほら、凛はこっち来て』


「は?」


『芋、たんないの』


ちなみに私は三番目くらいにじゃがいもが好きだ。美味しいし、何にでも合うし。


「いや、だから?」


『倉庫の方に取りに行くよ、ってこと』


流石に裏の庭で栽培はされていないだろうから。
一人で何個ものじゃがいもを運べる訳が無い。だから凛に来てもらうのだ。


「そう言う事な。わかった、今行く」





窓の外に黒い影が見えた気がした。


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