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「暑いねー、棗ちん」


『うん、本当に。ねぇ真琴』


「ん?何?」


「何でこうなった?」


「わー、見て見てきーちゃん!海だよ!」


「渚くん、海好きっスねー」


「だってこんなに大きいとこで泳ぐなんて滅多にないよ!」


「では、緑間さん、ここの理論は……」


「そっちもいいが、こっちの方がいいのだよ」


「おお!確かに!流石ですね……じゃあ……」


「何でてめぇがいんだよ」


「どうだっていいだろ」


「ひゃわぁぁあ……素晴らしい筋肉だわ」


うん。カオスだ。
まぁ、バスケ部がきたのは場所がかぶったんだな、程度に思うが……何故ナギたちがいるんだろう。私は呼んでない。
でも、あ。江ちゃんは日曜に来るって言ってたからわかる。いや、でも、その日合宿って凛が断ったはず。


「僕が呼んだんだ」


「ていうか、俺が頼んだ」


水泳部は出来たばかりだし、大量に部員がいるわけでもない。合宿費を出来るだけ安くしようと思った結果、赤司くんに頼んだらしい。
この海の近くに別荘があるらしい。それも、プール付き、バスケットコート付きの。
ツッコミどころが沢山あるのは黙っておいたほうがいいのだろう。
まぁ、凛によると出来るだけ安く済ませるために赤司くん達と一緒に泊らせてもらうことになったそうだ。


『で。何でナギたちがいるの』


「江ちゃんが呼んでくれたんだよー。あ、は僕らはそこら編の近くのホテルに一泊して帰るから安心して!」


「ただ単に(筋肉の)観光(観察)に来た(かった)だけです」


江ちゃん、心の声漏れてるから。聞こえてるの私だけかと思ったら凛も聞こえているらしい。ハルに関しては力こぶを作って自分でつついている。


『そ、そっか。……ごめんね、赤司くん。うちの部が貧乏で』


「貧乏ではないさ。節制上手なだけだろう。さぁ、案内するからついて来て。ほら、お前らも荷物をもて。桃井、大輝と涼太に荷物を持たしておけ」


「はぁ!?」


「大ちゃん、きーちゃん、よろしく!」


取り敢えず、グチャグチャな始まり方ですが……合宿がスタートするようです。


****


「棗の部屋は桃井と同室になるがいいか?桃井からそうして欲しいとの意見があったんだが……」


案内されたのは広い一室。今まで見てきたところは全て1人部屋だったのにここだけベッドが二つおいてある。
しかも他の部屋よりも広い。

さつきちゃんが頼んだのならば断る理由がない。


『ん、オッケーです。さつきちゃん、よろしく頼むね』


「ふつつかものですが、宜しくお願いします」


『何、嫁に来るの?』


「棗ちゃんのところなら行くー!!」


ギュウギュウと抱きしめられる。圧迫されてる、胸で。
正直、本当に苦しい。
こんなに可愛い子とずっと一緒にいれたなんて、羨ましい限りだよ、大輝。


『さて、昼飯作ろうか』


「それじゃあ、私も!」


「いや、桃井はこちらを手伝ってはくれないか?随分昔に建てられたから、汚くてね。掃除を頼みたいんだ」


「ええー、でも……」


私の顔を心配そうに見てくる彼女を見て私は首を縦に振りグッジョブサインを送った。
それを見て渋々うなづいた。


「うーん、わかった。やろっか。頑張ってね、棗ちゃん!」


『さつきちゃんもねー』


さつきちゃんに手伝わせたら最後、合宿どころではなくなってしまう。
みんな病院送りになってしまうかもしれない。それだけは避けなくてはいけない。
うちの部の花形が来ているのだ。大会前にぶっ倒れられたら困る。


『よし、頑張ろれ、私!』


自分に喝を入れ、台所に向かうと既に2人、そこに立っていた。


『……』


目の前の大きな彼を見上げる。
その、身長にあった大きな背中は自分が背伸びをしてもきっと肩まで届かないほどの大きな背中。


『ねぇ、シンクとか低くない?』


「平気。こうだから、いつも」


そう言って大股に足を広げ身長を調節したのだ。
紫原くんは紫原くんにいろいろ長身なせいで苦労したんだと思う。じゃなきゃ、こんなこと思いつきはしないから。


『すごいね。ハル、何作ってるの』


「味噌汁。煮干しの」


『また、めんどくさいものを……』


煮干は頭を取らなくては、美味しい味噌汁はできない。ハルはそう言っていた。
私が家事をし始めたと気に入っていたことを思い出す。彼は、本当に器用だ。なんでも、家庭科の成績が本当に良かったのだから。


『てことは私は、サラダを作るのか』


しかし、スポーツやっている男の子がどれだけ食べるかなんて知らないよ、私は。
ハルは小食だし、それに自ら望んであまり野菜を食べるような人じゃないから当てにならない。


『紫原くんはどれだけ野菜食べるの?』


「お、俺は野菜なんて食べないし」


『ぁ、そうなんだ……』


どうやら彼は野菜嫌いっ子らしい。
私から目をそらしまた包丁を動かす。

さすが、学部もそっちの方なだけある。軽快に包丁を動かす彼は慣れている。
きっとお菓子が好きな分、自分で好きなお菓子を作って食べていたのだろう。そうでなきゃ、こうも上手くならない。


「でも、みどちんとか食うよ」


「凛も結構食べるな。赤司も食べるだろう」


「うん。赤ちんも食うね」


『そっか』


ならば、結構作らなくてはならないらしい。
ちぎって切るくらいなのだが。単純で楽な作業だ。

面倒な作業は二人がやっているから。


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