1今年はモデルくんが入学したらしい。
私はそういうのに全然興味なしだから名前を言われても覚えてない。雑誌を見せられても顔なんて忘れてしまった。
でも、この騒がしさはちょっとやめて欲しい、ファンの人たち。
いや、格好いいとか思うのは構わない。ただ、うるさい。
てか、多分フェンス越しに見てる黄色い人が多分モデルくん。
「うるさいね……」
「真琴も思うか?ったく……迷惑だよな」
「……うるさい」
『……』
みんなのそんな声を聞いてしまうと動いてしまうのがこの体だ。
水から重たい体を引き上げて陸に上がる。
「?」
『ねぇ、黄色くん』
「俺?」
『うん。あのね、うるさいから見たりここにいたりするならあの女の子たちどうにかして?それだけ』
迷惑過ぎて困る。
そう言えば目を見開いたままごめんなさいと謝られた。
『ううん、気にしないで。……みんな、綺麗に泳ぐでしょ?』
「はい。でも、俺は……あんたが一番綺麗だと思った。イルカみたい」
その言葉が意外過ぎて。今度は私が目を見開いた。
ハルとか凛のが綺麗に泳いでると思う。
て言うか、ハルがいつもイルカって言われるのにね。
『じゃあ君は犬だね』
「え、何スすかその可愛い生きもん」
『何か懐いたら忠犬になりそうじゃん。じゃ、うるさいのよろしくね?』
流石に春にこの気温は寒い。いや、別に春らしい気温と言ったら春らしいのだが……何しろ寒い。
うるさいのを指さしたら頷く彼をしっかり見届けてプールに入る。まぁ、冷たい!
『冷たっ!』
「風邪引くよ?まったく……」
『うるさかったから……』
「ありがとな」
『いいえー』
でも注意しに行ってよかったってちょっと思ってたりする。
だってあの黄色くん私のこと褒めてくれたから。
やっぱりそういうのって嬉しい。
「……棗どうかしたのか?」
『え?』
「口元、緩んでる」
『あれ?いや、ちょっとね。あの人、私のこと褒めてくれたんだ。ちょっと……嬉しいです』
「そっか。よかったな」
『うん』
別に世辞でもいいんだ。私がよければそれで。
それに大切なことは今度彼を見つけたらお礼を言うこと。
ありがとうって!
感謝の言葉は大切だってずっと言われてきたから。
「……あいつの名前何だっけ?」
『……き、黄色い……犬?』
「いや、そんな名前親がつけないと思う」
「犬より鯖……」
『ハル、何か犬が食べれるみたいに言わないで』
まるで犬を食べたことがあるような、そんな顔をしていたハルの頭を小突いた。
犬はまずい気がする。というよりあんな目で見られたら絶対食べれないよ。つぶらな目でウルウルってね。
『みんなのもの〜、どきたまえー!』
「え、いつの間に!?」
『今の間に?』
真琴の驚いた顔をちらりと見てから飛び込み台から飛び込んだ。
やっぱり、水は気持ちがいいな。楽しいよ。綺麗だもん。
「綺麗に飛べるようになったな」
『でしょ?』
「ああ」
ハルが少しだけ笑ってくれて、少しだけ褒めてくれる時が一番嬉しいのかもしれないなぁ。
『えへへ、ありがと〜』
「ん」
照れたりすると可愛いのも、いいと思うな。
ああ、相変わらず、眠いなぁ……。
「おい、棗!寝るんじゃねぇ!」
『お休みー、凛……むぅ』
「ハルも止めてよ……ってハルも寝てるぅ!? 」
今日はモデルくんに会えてよかったな
褒めてもらえて嬉しかったですまる
……作文風に纏めるのもいいかな?
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