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「棗ちゃーん!」


『うっぷ!』


ピンクの髪が特徴的なちょっと、いやかなり羨ましい体型の女の子が抱きついてくる。
私を圧迫しているのはこのでかい胸だ。


『く、苦しッ……』


「さつき、死ぬぞそいつ」


「え?きゃぁあー!死んじゃいや!」


『ああ、おばあちゃん?おじいちゃ』


「!棗!?死ぬなっ」


あれ、ハルが目の前にいる……あれ、さつきちゃんも……。

おばあちゃんとおじいちゃんどこ行った?お花畑は?


「棗、そっちに行ったら帰ってこれねぇぞ」


『あり、凛?さつきちゃん。それに…………巨人くん、初めまして。君があれか。大ちゃんか』


「大ちゃん言うな!」


大きいサイズの彼はきっといつもさつきちゃんが言っている幼なじみってやつ。
きっと、私達と真琴みたいな感じだと思う。

ちなみに大ちゃんは大きいから大ちゃんね。


『だって、ほら、ね?』


「意味わかんねぇよ」


「つか、誰だよ」


「あ"?」


『……凛、喧嘩しちゃダメだってば』


何故か睨み合う二人。ちょっと同類っぽい。
凛が鮫だったら……


『君はクマか』


大ちゃんさんを指さしてそう言うと真琴が吹き出した。酷い、ナイスだと思ったのに。
ハルなんか固まってる。


「大ち、青峰くんクマさんだって!あははは!」


「さつきてめぇ、黙っとけ」


『嫌だった?』


「どっからクマになったの、ナツ」


『……え、勿論…………色』


だって大ちゃんさん、黒いし。おっきいし。
まさにクマでしょ?
そう言えば今度は凛が吹き出した。大ちゃん(メンドイからさんなし)は固まってる。


『さつきちゃん、講義行こう。クマ、ちゃんと来たら?えっと……桜が可愛そうだよ』


「いや、誰だよ」


『りょーたくんだった?さつきちゃん』


「良くんかな」


私は人の名前を覚えるのが苦手。はっきり言って学校でも一年でやっと覚えられた〜、とか思ったら離れちゃうってのが普通だった。


『ねぇ、クマ』


「てめぇ、いい加減にしろ。俺は青峰大輝っつうんだよ」


『わかった。大ちゃん、いくよ。じゃ、またね。ハル晩何がいい?』


マジで大ちゃんだった……。


「鯖」


『わかった。味噌漬けでいいや』


晩何がいい?とハルに聞いたら必ずと言っていいほど鯖と、帰ってくる。
ちょっと、飽きるってば。頑張って私も考慮してたりするんだけどな。


「ねぇ、棗ちゃん?」


『ん?』


「今日は入るの?」


『プール?はいるよ。だって凛が入るって言ってたから。私もちょっと入りたい……寒いけど』


「そっかぁ」


少し残念そうなさつきちゃん。
理由を聞けば最近できたカフェに行きたかったらしい。

それはまた今度行くことにした。


『それより、眠い……』


「え?そうかな?」


『ほら、大ちゃんをみて』


歩きながら寝てるよ?


「起きなさい!」


どっから出した、と聴きたくなるハリセンがいい音を立てながら大ちゃんの頭を直撃。


『……あ、大ちゃんってあれか。バスケ馬鹿の』


ふ、と叩かれた彼を見て思い出した。そう言えば最近できたお友達が言っていた気がする。
今年のバスケはキセキの世代が入ったって。

キセキの世代って何、何だけどなぁ。私にとったら。


「おい、」


『んー?』


「お前、名前は?」


『七瀬ー。あ、でもハルがいるからできるなら名前で呼んでよ。私は七瀬棗』


よろしくと言って手を出せば彼も手を出した。
でかいな、手。真琴みたい。
でも、真琴はこんなに大きくないかもしれないなぁ。


「青峰大輝だ。大ちゃんっつうのはやめろ」


『うん。名前はなんとなく覚えたよ。アホ峰でしょ?』


「……バカにしてんのか?」


『あ、ごめん。間違った。青峰くんか』


怖い形相。
般若じゃん。まぁ、怖くはないけどね。大体間違ったくらいでそんなに怒んなくてもいいじゃん。

まぁ、ちょっとこれは直さなきゃダメかなぁとかは思うけど。


「あのねー、棗は水泳してるんだよ!すっごい早いの」


「ふ〜ん」


「遙先輩とか凛先輩とか真琴先輩とか綺麗なんだよ!」


友達や兄を褒められるととても気持ちいい気分になる。
後でさつきちゃんには飴ちゃんをあげよう。ありがとうって。



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