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帰り道、ジャリとアスファルトを踏みしめて大輝の手を握って歩いていた。相変わらず、花火を見ても収まらなかった心臓。
大輝には聞こえていないのだろうか。聞こえていなければいいけれど。


というかさっきの、聞き間違いだった?いや、そんな筈ない。
行く時のように無言で、しかも私から話すのも恥ずかしいのだ。


「なぁ」


「っ……」


「俺はああいうことは鈍いほうじゃねぇよ」


その一言に私は背筋が凍った。
もし大輝が言ったようにニブちんでないのならば私の想いはもうとっくの昔に大輝に気付かれていたということだ。


「……俺の勘違いじゃないなら」


そこで一呼吸おいた彼は私の手をきつく握り笑いかけた。


「俺ら両想いじゃねぇの?」


当たり前のことを口にしているように聞こえた。耳を疑った。
私は大輝に迷惑ばかりかけている。大輝自身、面倒ごとはあまり好かない性格だった。でも根は優しいから突っ撥ねないのが彼だ。


「……へ?」


「俺はお前のことが」


「ストップ!」


「あぁ?」


頭が思考が、追いつかない。彼が、大輝が言ってることについて行けてない自分がいる。大輝は何を言おうとしてる?


「だから、俺はお前のことが、

好き

だっつってんだろうが」


ああ、さっきの時よりももっとうるさい。多分大輝の好きと私の好きは同じだ。それくらい望んでもいいはずだし、理解してもいい筈だ。大輝は両想いだと言った。だったら私の好きと彼の好きは同じなんだ。


「ねぇ、大輝?」


「ん、だよ……」


「ありがとう、嬉しっ」


ポロポロ流れ出たその涙に私自身も驚いているのだ。無造作に拭われた涙。大輝の大きい手に流れ落ちる涙が掬われていく。


「な、何で……そんなに、嫌だったのかよ」


君は私の言葉を聞いているのか。嬉しいと言ったのに、聞こえてなかったのか?嗚咽で、消えてしまった?じゃあ、もう一度言えばいい。


「嬉しいって言ったの、聞こえなかったっ?」


「……じゃあ、さ」


「好き、だよ……好きっ」


でもね


「―何だよ」


キスはしちゃダメ。


「だって、私のファーストキスあの男に取られちゃったからっ、だからっ」


「は?」


「は?」


「あー?あれがファーストかよ。んじゃあれはセカンドだ。安心しろ。ファーストは俺がもらってる」


「……嘘だ」


「お前ほんとに覚えてねぇのかよ」


彼はなんの話をしているのだろうか
さっき聞いた話からすると大輝と私はキスをしている、という事に―


「は、はぁぁあ!?え、ちょ、んん?」



混乱した頭は簡単に大輝の話についていけてなくて。ただわかってるのは、私のファーストキスというのは大輝がとってくれているということ。しかもしたのは、私が風邪の時だというじゃないか。


「……記憶にない。酷い」


「ぁあ?んなもんいいじゃねぇか。減るもんじゃねぇんだし」


「ファーストキスは減った!でも!」


「んだよ」


「あいつが、あの男が相手じゃなくてよかった」


私があいつとキスしてしまったのに変わりはない。でも少しだけ嬉しかったのだ。誰だってハジメテというのは好きな人や大切な人としたいものだ。


ああ、大輝は暖かいね。
抱きついて腕を回した人はとても暖かかった。


「大輝」


「んだよ」


「私、ダメダメで大輝に釣り合わないかもしれない。でも大輝が好きだし、人並みに欲もある。そんな私でもいいなら」


―付き合ってください。好きになってください。抱きしめてください。それでもし、いいなら、キスしてください


あたりめぇだろ


長かった恋がようやく終わりを告げました。


青春を謳歌する時がきました。


恋愛が、始まりました。


「好きだよ」


「わぁってる」


優しい口付けを交わした。


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