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『おいしっ』


麺を勢い良く吸い込む。日本人だから、音立てても怒られないでしょう?女の子らしくないけれど。


「汚いよ、ナツ」


『いいじゃん、日本人だよ、私達は。真琴はジジくさいからヤになる』


「ええ!?酷いなぁ〜」


『笑いながら言うから嘘臭いー。そのヘラヘラした顔どうにかしなよ』


「酷っ。今の本当に酷いっ」


ハルと凛は泳ぎに行っちゃった。ナギは竜ヶ崎くんの分のカキ氷持って行ってしまった。
だからここにいるのは私と真琴だけな訳だが……何せ彼は兄の心を読むやつだ。当然のように私も読まれてしまっているだろうか?


『ねぇ、真琴』


「ん?何?あ、水?はい」


『!……何でわかるの?』


水をとって、そういうつもりだったのにわかってしまう彼はやっぱりすごい。


「え?何でかな……わかんないや」


『そう』


観察力がきっと誰よりも高くて、誰よりも気配り上手なだけなのか。
私もなるべく気配り上手な人になれるように頑張ろうかな。真琴みたいに優しいお兄さんみたいになりたい。まぁ、連、蘭、がいるからきっとこういう優しい性格なんだろうけど。


「あ、棗っち。何食ってるんスか?」


『見てわからない?焼きそば』


「美味い?」


『うん。おいしいよ』


きーちゃんこと、黄瀬くんはおじさんに焼きそばを頼む。
それを横目で流して真琴の顔を見る。茶色の髪と薄緑の瞳。タレ目で可愛い、でも、体は男の子で大きくて。


「お隣、いいっスか?」


『どうぞ』


きーちゃんが横に来ても食べ方は変えず、そのせいか驚いたような目で見られたが気に求めなかった私は女を捨てている訳ではないよ。日本人だから、してるだけ。


『ねえ、気になってたんだけど……その〜っち、って何?』


「ああ、これっスか?これは俺が尊敬した人につけてるあだ名」


きーちゃんも音立てて啜ってるし。私とたいして変わんないじゃん。

性別の壁は分厚いのかもしれない。


『何に尊敬してるの?』


「泳ぎ」


『……へー』


「あんたの泳ぎ方はすっげー綺麗だから。だから七瀬先輩も、橘先輩も、松岡先輩も、すっげー好き!尊敬してるんスよ!」


コロコロ表情を変える彼はやはり、モデルだけあって綺麗な顔の部類に入るのだろう。
イケメン、ではあるが、私的には綺麗な顔と言った方が彼らしい気がする。


「何か、照れるな……」


『ブッ!真琴顔真っ赤』


「ほんとっスよ!橘先輩の背泳ぎむっちゃくちゃ好き!カッコイイですもん」


「ありがと」


顔を赤くして頬をかく真琴。
そんな時、横から伸びてきた箸に固まった。


「うめぇじゃん」


『大輝……何食ってるんだよ』


海水で湿っている頭に拳骨をプレゼントした。
衝撃に顔を歪める、大輝。当たり前でしょ、他人のモノ無断でとってるんだから。

むしろ拳骨だけで終わったことに喜んで欲しい。


「……いーじゃねぇか。ちょっとくらい」


『あんたのちょっとは多いからね。嫌なんだよ〜』


「んじゃお前がくれ」


『は?もう食べたじゃん』


「まだ食う。ほら、」






あーん、とから心臓に悪いので一発また殴って焼きそばのパックごと彼に押し付けて海に走った。


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