1一部、不快にさせてしまう部分があるかもしれません。気持ちが悪くなったは場合は一度落ち着いてから読み直すかお考えください。
その日、普通に帰っていた。ただ、帰る時間がハルたちよりも遅くなってしまったということ。外は見渡す限り街頭と他人の家の家から漏れた光だけで真っ暗だということ。
だから、だろうか?怖いんだ……後ろから聞こえる男物の靴の音。
少なくとも小一時間巻くために歩いているのについて来る。
ハルに、電話して迎に来てもらったが……。
その時にちゃんと言っておけばよかったんだと後悔した。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「棗ちゃーん!」
『おはよー』
「あれ、ちゃんと眠れた?昨日」
『まぁまぁかな』
嘘。実はまあまあじゃない。眠れていないの方が正しい。でも、さつきちゃんに言いたくなかった。心配かける以前にそういうことをさつきちゃんから聞いたことがあって、彼女自身とても怯えていたからだ。
こちらから話すと怖がらせてしまうかもしれない。
「ホントー?」
『ホントホント。今日は目一杯泳ぐから見に来てよ』
「行くっ!」
『よし、頑張る』
嫌なことがあったら泳いで忘れよう。
でも、あの日以来本当に眠れていないから実質体調は優れないと言ってもいい。
無茶苦茶シンドいし、辛い。フラフラもする。でも、それでも、泳がないとスッキリしないから。
泳ごう。
****
「棗。そのうち倒れんぞ。休憩くらい挟め」
そんな凛の警告を私は無視して泳ぎ続けた。さつきちゃんも言ってくれたが忘れられないのだ。
ハルに電話してなかったらどうなっていただろうと嫌な方向へと思考が走る。そんなものを振り払うようにがむしゃらに泳いだ。
「……遙先輩、止めなくてもいいんですか?」
「あいつは何か忘れたい時にこうやって泳ぐ。止めたら余計モヤモヤして寝なくなるだろうから、これでいい。だが……」
「だが?」
「もう直ぐ倒れる。スタミナ切れと疲れとで」
水を取りに行くためにプールから出てプールサイドを歩いてる時だった。視界がぼやけて足元がおぼつかなくなった。頭痛が酷い。
壁にもたれ掛かり、深呼吸をするが頭痛は収まらない。
「っ、棗!」
『ハ、ル……』
彼に心配をかけてはいけない。わかってる。だってもうすぐ全国大会に出なきゃいけない。
だから余計な心配は、かけたくないんだよね。
大丈夫大丈夫、そうやって自分に言い聞かせていれば大丈夫だから。
「大丈夫か?」
『っう、ん。へーき、へーき』
「……そうか?」
『ん。泳いでくる』
どっからどう見てもおかしいのなんてわかりきっていた。自分でもわかる。
ああ、でも……帰ろうかな?
『やっぱり帰るね。課題しなきゃだし』
「わかった。気をつけろよ」
更衣室で着替え、帰り道にある体育館まで一緒に帰った。
「棗ちゃん、何かあったなら聞くよ?」
さつきちゃん、私にはその言葉だけで十分です。
そこで別れた私達。私は家に、さつきちゃんは部活に向かった。
でも、気づくのだ。また、足音がついてくると。このまま家に帰ったらどうなるのだろうか?マンションだ。他人には入れないし、マンションまで入ってこられたら受付の人に言えばいい話だ。
私の思ったとおり、マンションの中までは入ってこなかった。ガラスにうっすらすけて彼の姿が見えた。
『典型的だな、おい』
フードをかぶっていてラフな格好。でも、顔が見えない。そこだけが不安で怖かった。
そんな不審者を一瞥して、私はマンションの中に入り部屋に向かったのだった。
そこでまた再び後悔をすることとなった。
そのまま家に帰ってくるんじゃなかったと。
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