1 『ハル……』
「ん?どうした……顔赤いな。座れ、熱計るぞ」
『……』
帰ってきた次の日、どうやら私は寝落ちしたようで起きたら自分のベッドだった。
そこまではいい。汗もかいていたし、寝たせいで体は冷えていた。だからだろうか……
「38.6……」
サァ、と青ざめていく私の兄は寝ろ、とだけ言って台所に引っ込んだ。
……また、恒例の鯖粥でも作るのだろうか?鯖がここまで来るとさすがの私も驚く。鯖が入った粥を食べたとき、衝撃的だった。
だってドラマとかでは普通のお粥という魚も何も入っていなかったからだ。
『……寝よ』
どうでもいいことは考えないでおこうと思う。頭使うとガンガンするし……何より、寒いしフラフラする。
壁に手をつきながら慎重に動いた。
『あ……連絡……』
休むのだから連絡を入れなくてはならない。
携帯に入っている番号を出してかけると誰かしら出た。
もう、とりあえず休むことだけ伝えると電話をきりベッドに倒れ込んだ。
「棗、食べれるか?」
『……』ブンブン
「ダメ、か……俺は講義今からだから何かあったら言え。電話してくれても構わない。真琴でも、凛でも。俺が出なかったら桃井でもだれでもいいから頼れ。いいな?」
『……』コクン
「ん、よしよし……」
柄にも無く本当にハルって兄なんだなぁ、そんなどうでもいい自覚をして大輝よりは小さいけれど逞しいその手に頭をなでられて目を細める。
「腹減ったら電子レンジの中に入ってるもの温めて食え。食べたら薬飲んで寝ろ。いいな?」
『ん』
「いい子にしてろよ」
彼はそう言って部屋から出て行った。
玄関がしまる音。鍵がかけられる音もした。食欲ないし、寝るしかできない風邪にイラつく。
『けほっ……ごほっ……ぅ』
重たかった瞼を閉じた。
ちゃんとさつきちゃんにメールをいれてから。
****
「さつきさん、携帯鳴ってません?」
「え?ホントだ……ってえぇ?」
「どうかしましたか?」
「これ……」
画面に表示されたメールを前に座っていた黒子に見せる。それを読んで黒子も桃井と同じような表情をした。
−−−−−−−−−
きようやすむ
かぜひた
ごめんの
−−−−−−−−−
平仮名一色のそのメールに二人して不謹慎ながら吹いて笑ってしまったのだ。
それに所々文面がおかしい。最後だってごめんね、とでも打とうと思ったのだろう。
それに改行が永遠に続いていたためどれほど重症かわかった。
ただ眠たかっただけなのだが。
「お見舞い、行ったらダメかなぁ?」
「うーん、青峰くん連れてきます?」
「あ、それいいね」
「もうすぐ授業始まりますし終わってから」
「そうね!じゃあ、コンビニか何か寄ってゼリーでも買ってこっか」
「ええ、そうですね」
こんな話があったとは棗は知らない。
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