3『き、 キャアアアアアアアアアア』
「うるせぇぇええええ!」
『い、いやぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ』
「……何も言わねぇよ」
『きゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ』
「……俺が悲鳴あげたい」
『助けてェエエエエエ死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬゥゥウウウウ』
……ジェットコースターじゃないって初めて聞いた。というか、何、何でいきなりお化け屋敷みたいになってるの?え、これエレベーター?え、さっきのおじさんみたいに落ちてさようならコースじゃないの?
『ハ、ハルゥゥウウウウ』
「何だ 」
「いや、どこだよ、どこから聞こえたんだよ!」
「俺も、無理……」
「紫原!?」
「……まいう棒、出そう……」
「あんなに食ってるからだろう、敦は」
「う……」
「み、緑間くん、やめてよ。口押さえないで……」
「す、すまない……」
「赤司?」
「何だ?」
「あっちに手を振っている祖母が……」
「遙、振り返すな」
「真琴……?」
「…………」
「え、真琴?」
上下のシェイプだとは思っていなかった私は……悲鳴をあげまくった。
だって、ジェットコースターだとばかり思ってたんだよ。
確かに見た目は縦長でホテルみたいな建物だったけど……。
「まぁ、それは冗談だ」
「そうか、それならよかったんだが……。まぁ、それより大輝と俺と遙と凛だけか。って、涼太は……」
「……」
「ほうっておいて平気だろう」
目をあけたまま気絶していたきーちゃんがいたなんて私は知りもしない。
『っう……ふっ……』
「な、泣くなよ!」
『うぅ……青峰く、んの、バカっ……ジェットコースターじゃないなら、いってよ……ふ、ぅっ』
「いや、何俺のせいみたいになってんの?」
降りたあとグロッキーでみんなして休憩。いや、それよりもさつきちゃんと黒子くんが平気ってのが不思議なんだけど……。
「ん、理由?何か上を向いていたらマシになりますって言ってたの、係りの人が。した向いてたりとかしたら余計気持ち悪いですよって。ね、テツくん」
「はい」
そういう事は言っておいて欲しかった。だって、吐きそうなんだもん。
『り、凛……吐きそ……』
「は?ちょ、桃井!トイレ!」
私のことを抱っこしてからさつきちゃんと一緒にトイレまでダッシュしてくれる凛は優しいけど……
『た、俵抱きはやめて……出る……』
ほら、お米とか持ってる人が歴史の教科書にいたでしょう?俵で肩に乗っけてる……あれね。
「棗ちゃん、平気!?」
走りながら聞いてきたさつきちゃん。その言葉に頷き凛の背中を軽く叩く。
『あ、あんまし……でもなんか、だいぶ治まった』
「ホントか?」
ストンと私を地面に下ろす凛。凛にもたれ掛かってそのままぐったりとする。
さつきちゃんはお水を買いに行ってくれた。
何か、何から何までごめんなさい。
「ったく、見栄張って青峰と乗るからだ。下で待ってたら良かったのに」
『それでも、乗りたかったの……。ハルと来たかったとか死んでも言えないから……』
「!」
『ハルと、乗りたかったの。隣り乗ろうとか言えなかったからダメだけど、乗りたかったから…… 』
「そうか」
『……うん』
凛は知ってるんだ。
……ハルは海に泳ぎに行っていて帰ってきてくれなかった。お祖父ちゃんはハルをずっと待ってたのに。私はそれに怒ったらハルは泳ぐのを辞めるとか変なこと言い出したから私はそれ以来ハルといたくなくて家を出た。
距離を置いた方がいいと思って東京の競泳の強豪校に行っていた。
頭は普通だし、推薦だったから競泳を頑張っていた。
ハルは私の家に来るなり私を抱きしめて謝ってた。真琴も凛も後ろに立ってて。
『ふふ、あの時久々に凛に会ったんだよねー』
「あ?」
『ほら、ハルたちとこっち来たとき。オーストラリアから帰ってきてたって知らなかったし。お正月も泳いでたから家帰んなくて』
競泳って一回休んだらもう追いつけない気がするんだよね。タイム遅くなる気がして怖かった。休むの。
合宿も何もかも青春を競泳に注いだ女だからね私。
「そうだったのか……ま、今は気にしなくていいんだろ? 」
『うん』
「ならいいじゃねえか。あ、桃井わりぃな」
「いえ!全然大丈夫ですよ?」
さつきちゃんは私の頬にペットボトルを押し付ける。
むちゃくちゃ冷たい。気持ちかった。
『ありがと……さつきちゃん……』
「いいよ!ほら、飲んで、大丈夫になったらみんなのところ行こう?」
『うん。もうだいぶ平気だから行こうか』
「ホントに平気?」
『うん!ほら!』
「ふふ、じゃ行こうか。いきましょ、凛先輩」
「ああ」
さつきちゃんはいいこだと思う。だって他のみんなと違って敬語だし。あ、黒子くんもいい子。
でもね、さつきちゃん。私はあなたの味覚をちょっと疑ったのね。
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