3まず、全身を拭いている緑くん。
『ねぇ、名前は?』
「緑間だ」
『おっけ。緑間くんだね』
覚えたよ、とでもいうかのように数回頷きそして親指を立てて笑った。
ふん、と鼻で笑われたのは無視しておこう。
そして、黄色い犬さんだ。
『ねぇ、名前は?』
「え、マジで言ってるんスか?」
『うん。名前はー?』
「黄瀬涼太です」
『よし、きーちゃんね』
「あれ、なんか俺だけみんなと名前が違う?」
「ナツちゃんは苦手な人と距離置こうとするからあだ名付けるんだよー」
「え、それって逆に可笑しくね?」
無視しましょう。それが一番いいと思う。
そんな私の頭に手を置いたのは凛だ。
『おやま、どったの?』
「んー、何でもねぇよ。撫でたくなっただけだ」
この人は凛。
高校の時にむっちゃグレてたらしい。今はそんな事してたかもな、ってくらいにしかわからない。
赤い髪にギザっとした歯。ちょいつり目で、これが所謂イケメン。
「こんにちわ」
「こんにちはー?」
「おっきいねぇ、君」
「まぁね〜」
「2mいってるの?」
「多分ね〜」
ほわほわした会話をしてるのは紫原くんと真琴だ。
紫原くんはとっても大きくて……食いしん坊だと思うな。いつも何かしら食べてるもん。
「ねえ、ナツち〜ん。何か美味しいものもってない?」
『あ、チョコならあるよ。板チョコ』
じーっとモノ欲しげに見てくるから上げちゃった。
お礼を言いながら頭に腕を乗っけるのはちょっとやめて欲しいな〜、なんて思ってしまう。
「お、棗にもついに春が来たのかな?」
『真琴……違うから、頼むから助けて』
「うん、ごめん。冗談」
紫原くんを私から引っペがしてくれたのは真琴。
私とハルの幼馴染。モテモテ好青年だと思う。力持ちだし優しいし、たまーに笑顔が黒い時があるけど全然それを気にさせない人。
一言で言うと優しい体操のお兄さん、みたいな?
「真琴、見ろ」
テクテクと人間観察をしていたハルが真琴と私に向かって歩いてきた。
ああ、紫原くんは美味しそうに板チョコ食べてるよ。
『ハル、お帰り』
「ん、ただいま」
「で、どうかしたのハル?」
「多分あの体格はとてつもなく競泳に向いている……」
目線の先には青峰がいた。
『多分江ちゃんがいたらすごいと思うの、私だけ?』
「いや、俺も今思ってた」
『あはは、やっぱりそうだよねぇ』
江ちゃんっていうのは凛の妹。一言で言うと、キモいほど筋肉フェチ。
だって、なんでそんな所の名前知ってんの?みたいなことをハルたちの体見ていうから。
「んぁ?何だよ」
『んーん。別に?』
こちらは青峰。本名はアホ峰。
「いやお前もうそれわざとだろうが!」
『え、ごめん、てっきり、阿呆峰なのかなって期待してた』
「馬鹿かっ」
『え、青峰くんには馬鹿って言われたくないな』
なんて会話してみたりする。
『ふふ、なんか青峰くんの横は落ち着くね』
「な……」
『は?』
「な、なななな何言ってんだよ!」
『え、なんか変なこと言ったかな私、ねえ、赤司くん』
そう言って赤司くんを振り返れば口元を抑えて笑っていた。
私は何か不思議なこと言ったけっけ?
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