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たらふく食べた腹を叩く。それを大輝が引いた目で見るので背中をまた叩いてやった。
こういう時に浴衣を着てこなくて良かったと思う。だって、食べれないから。まぁ、一番の原因は私自身が上手く着れないってことなんだけど。そこは無視して……。
でも、大輝が女の人を見る度に着てきたらよかったな。そう思った。だって、見る女の人全員がだいたい浴衣だし。


「……浴衣のが、よかった?」


「あー……いや?」


「そうなんだ」


今、少なからずホッとしたのは認める。本当にホッとしたから。


「お前はあの女が来てる着物が一番似合いそうだな」


そう言って指さした先にいたのはリンゴ飴をほおばって彼氏と座っている女性。
青地に波紋と錦鯉のような魚が描かれているその在り来たりな柄。
でも、多分大輝が言っていることは本当なのだ。私は、あれのもう少しシンプルなバージョンを実際に持っている。おばあちゃんが似合うと言ってくれたから、ずっと着ていたのだ。流石にもう着れないけれど、大きいのをもう一着買ってある。それも同じような柄を探して購入した。もう、自分自身では着れないけれども。


「そう?」


「ああ」


意外にもこの男、他人を見ているのだ。
未だにつながれた手に力が入る。恥ずかしくてそうしてしまったその手が反対に強く握られた。握り直されてしまったその手を見て大輝の顔を見れば前を向いていてどんな顔をしているかはちゃんと見えないが照れてるのだけはわかる。だって、微かに顔が赤いと思ったから。
大輝はこんな反応を誰にでもするんだろうか。それ以前にこうやって誰とでも手を繋ぐのだろうか?


「大輝っは」


「は?」


裏返った声に驚いて口を押さえた。少しだけ乱れた呼吸を直すと再び口を開く。


「誰とでも、こうして……その、手をつなぐの?」


「は?」


「だから!こうして、誰とでも手をつなぐのかって聞いてるんだけど」


だんだん萎んでいく声と共に顔を俯ける。
こんなことを尋ねるのがまるで……


「嫉妬してんの」


そう、大輝が言ったように嫉妬しているみたいだから。


「ちがっ」


「お前さ」


自然と引っ張られてきたそこ。


「俺の事」


花火が一番綺麗に見える場所だと思った。












「好きなのかよ」












パァンッ……そう言ってはじけた花火。でも、そんな音耳には微かにしか入っていなくて。入っていて、私の耳を、心臓を支配したのは大輝のその声だった。
上がる花火。大輝を見た時には既にその花火を見ていて。私もそれを見て見上げる。
カラフルなそれは大きくて、見てて綺麗だと口から自然と溢れるものだった。


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