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「棗おはよう」


『ハル、何回も言ったでしょ?女の子の部屋に入らないでって、勝手に』


「っ」


ハルの鼻先で開けられた扉を閉める。
着替え中だったどうする気だったのか、全く。


「ごめん、起きてないと思ったから」


『あー、はいはい。ありがと』


私が部屋から出るのを待っていたのかシュンと項垂れたままの彼が目の前にいた。
これではどっちが兄で妹か分からない。


『ハル、今日も鯖?』


「ダメか?」


『んー、別に。好きだし、鯖』


「ならいい」


まぁ、普段は素っ気ないハル。大学内でも素っ気ないのは変わらずだ。
真琴や渚、凛の前でも無表情である。
私の朝は毎日が鯖の匂いで始まる。


さっきも言っていた通り、別にいい。だが、毎日が鯖ってのは少々飽きてしまう。


『ねぇ、明日は私が作るよ。流石に飽きる』


「……そうか?」


『うん。起きれたらだけど……』


「起きなかったら作っとく。俺は講義だからもう行くぞ」


『いってら〜。ハルもようやく真琴無しでも……』

ピンポーン


玄関から聞こえるその音は紛れもなく幼なじみがハルを迎に来た音。
やはり一緒に行くらしい。
ハルは何時になったら真琴無しで大学に行けるのだろう?


「ハルー?ナツー?」


『って、私もやばいな。一緒に行くよ』


「今行く。早く」


『先行ってて。走ってくから』


焼けたパンにハルが焼いた鯖を乗っける。他人から見たらエグい食べ方らしい。気にしてないからいいけど。


すぐにいるものを鞄に詰めて玄関へと走る。鍵をきちんと締めたか確認して私はマンションから出た。


『ケホッ』


魚って骨があるから嫌だ。


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