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明らかに、おかしい。そう気付いたのは数分前だった。
妹の棗が出かけてから何時間経ったろうか。昼過ぎに出ていって、もう6時間以上は経つ。おかしい、そう思い凛たちに電話をかけた。ついでにバスケ部メンツにも声をかける。今まで棗に付き添ってくれたりしていたのだから。


「で、ハル。棗は誰とどこに行ったんだよ」


「高校の時の担任、でどことまではわからない……」


「は?担任と6時間も出てんのかよ。明らか怪しいだろ」


「確かに、青峰の言う通りだ。高校の時の担任ってことは、高校に電話したら家とかわかるだろ、そいつの」


凛の言葉に遙は携帯電話を手に取り棗が通っていた高校に電話をかける。
いくつか質問と会話を繰り返す遙をみんなが見守る中、素っ頓狂な声をあげた。


「は?…………今は教師じゃ、ない?」


〈ええ、女子高生にセクハラをして辞めさせられました〉


「……ありがとうございます。もしよければ、住所など教えてもらっても」


メモを引出しから出したあたり、教えてもらったのだろう。ペンを滑らせ、礼を一言いい通話を終了させた。


「今はもう教師じゃないらしい。住所はここから車で行ける距離。凛、頼めるか」


「わかってる。お前よりはマシな運転するしな」


遙も一応免許を持っており、車も持っていた。しかしこの性格だ。ふらりふらりとしてしまう。そんな車より、凛が運転したほうがいいに決まっている。

鍵を凛に渡し、行く準備を始める。それに続いて青峰桃井と続く。だが、桃井は黒子に止められた。代わりと言っては何だが黄瀬が立ち上がりついて行くことになる。


「俺、多分相手見てるんで着いてきます」


「え?」


「こないだコンビニ前で会ったんスよ。多分あいつっス。電話番号教えてとか言われてたし……」


そんな黄瀬の胸ぐらを掴む手があった。
浅黒い、太くて逞しい腕が黄瀬を壁に叩きつける。恐る恐る相手を見ると、想像を絶するような顔をしていた。


「あ、青峰っち……」


「てめぇ、何で止めなかった、怪しまなかったぁ!?あぁ!?」


「っ!」


「あ、青峰くん!落ち着いてください」


黒子が止めに行くも虚しく。意味をなさなかった。そして、黄瀬を壁に押し付けた本人、青峰は鬼のような形相でもう一度同じことを黄瀬に聞く。


「ぅ、ぐっ……俺、は……止めた、スよ?け、ど……平気だっ、て……」


そう、確かに棗は教師だから平気だと思っていたし、心配してくれた黄瀬に対してもそんなことをいった。
黄瀬も本人がそういうなら、怪しいと思っても心に止めて、そのままにしてしまった。あれから三日たったが、まさか本当にこんなことが起きるとは思っていなかったのだ。


「大輝、涼太に当たっても仕方のないことだ。お前らがそうやって争っている間棗はなにかされているかもしれない。そんな低争いやめろ」


静かにそういったのは赤司だった。今まで何も言葉を発していなかった彼は部員をようやく注意し、ため息をついて立ち上がった。それから、二人の頭を殴り玄関を指さした。


「そんなどうでもいいことをしている暇があるなら、早く棗を探して来い。バカどもが」


「……っち」


舌打ちをした青峰は、先に出ていっていた遙たちを追うために玄関に向かっていった。
後ろから黄瀬の声が聞こえたが、気にしなかった。


「テツ、悪かったな」


黒子に、謝ってすぐに玄関を開け、出ていった。棗が無事であることを祈って。



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