「名前久々に呼ばれたかも」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「清志くん!包丁なんて持っちゃダメだよ!大切な指が切れたらどうするの!?」

「火元に近づいちゃダメ!火傷して一生傷になったらどうするの!?その時は私がもらってあ・げ・る・け・ど!」

「だ、ダメ!清志くんお味噌汁は私が作ったの食べて!どう!?どう!?どう、どう!?」
「#name1#さん、静かにしてねー」

家庭科室、調理実習の授業の日である。さて、本日宮地は班が違うくせにちょっかいと言う名の心配を向けてくる#name1#のせいで包丁に触るどころかIHに近寄ることもできなかった。

「だって、先生。清志くんの肌に傷でもついたら……先生は責任を取れるんですか?」
「はい、#name1#さんの班長ー引き取ってくださいな」
「…………大坪、どうにかしてくれ。同じ班だろ」

宮地の呆れた声がシン、とした家庭科室に響いた。周りは彼女を止めることを諦めているし、この出来事を見守ることをクラスで決めているのだ。口出しすれば自分にとばっちりが来るのを彼らは知っている。

「ほら、#name1#。宮地は違う班だから」
「いや!私に触らないで!私に触っていいのは清志くんだけよ!それに私の作った味噌汁の感想聞くの!」

芝居がかったその言い方にクラス全員、先生を含め頭を抱えたのだった。そして、それを言われた大坪はいい加減にしろと軽く#name1#の頭を叩く。

「#name1#」
「何、清志くん」
「もう俺に近寄んな。近寄ったら焼くぞ。それと味噌汁うめぇ」
「本当に!?やったぁ!そしてその罵りさえも」
「もう本当に辞めてくれぇぇえ!」

この件を毎日聞いている俺の身にもなれ。
大坪のため息混じりの言葉に木村が同情するのであった。

。。。

今日の体育薙刀だってー
その声に#name1#の目が輝く。

「道着着てってもいいかな?」
「いや、ダメだろ」
「え」
「何ガチ目に驚いてんだよ。体操服があんだろ」
「ちなみに清志くんはブルマ派ですか?」

華麗にその質問を無視した宮地は教室を出ていこうと#name1#に背を向ける。それを見た彼女は急いで体側服を持って宮地を追い掛けるのであった。

「ねーねー、#name1#ちゃんや」
「何ですかな、英子ちゃん」
「いや、いい加減諦めろ?」
「はい、無理」
「はい、50敗」
「いい加減にしなよー英子」

A子……ではく英子がうなだれるのは彼女の隣の席のI子……ではなく愛子といちごオレの賭け合いをしているからであった。

「だって、いちごオレタダで飲みたいじゃん!」
「いやもう、愛子に多額払ってる時点で辞めようと思えよ」

ちなみになんの賭けかというと#name1#が宮地を諦める、という無謀なかけである。そしてそれを英子は50回#name1#に掛け合い、賭けで負けるのであった。

「50回ってことはいちごオレ何円だったっけ?」

#name1#のその言葉にいつも払わされている英子が溜息をつきながらヤケクソになりながら叫ぶ。

「120円!」
「じゃあ、6000円だね」
「え?」
「英子が今までに払った金額が」

そのあまりにもリアリティのある数字を#name1#の口から聞いて真顔になった英子。そして、クルリと愛子を見ると涙をこぼしながら言った。

「参りました」
「よろしい。いつもゴチになってます」
「わぁぁぁあ!」

その阿呆丸出しの空間から扉を開け出ていこうとした#name1#はふと思いだし英子を見て笑う。

「ちなみに、数え間違い。今日ので52回。だから実際の額は6240円だね」
「わぁぁぁあ!!!?」
「あ、あははは」

あらあめて天才の記憶能力に感心したクラス女子であった。

「あれで学年2位には絶対入るんだから凄いね」
「しかも頑張ってる理由が……」
『宮地の名前の上か下にあるのが自分じゃないと気がすまないってこと』

クラス女子の声が全員揃った。
つまるところ、宮地の下や上に違う女子の名前がこないようにしているらしい。

「でもあの子、一年の時はあんなに宮地房じゃなかったんだけど」
「というか、おとなしい子だったよねー」
「いつから変貌した?」
「二年後半?」

その言葉に、首をかしげたのだった。

「清志くーん!」
「来るなぁぁぁあ!」

その声は勿論一年生のクラスにも聞こえていて。

「なー、真ちゃん」
「何なのだよ」
「また宮地さんと#name1#先輩やってんぞー」
「ふん。仲がいいほどケンカも多いのだろう」

窓枠から身を乗り出し、グラウンドの光景を見守る高尾の後ろで優雅におしるこをのむ緑間であった。

「あ、女子の先輩に連れてかれてる」

「あんたは体育館でしょうがぁ!」
「い、痛い痛い。色葉痛い!髪の毛痛いよ!?」
「体育館!」
「いやぁぁぁあ!清志くん!」
「#name1#、いってら!」

その笑顔は彼の名前通りの清々しい笑顔だった。

「ねぇねぇ色葉」
「何」
「名前久々に呼ばれたかも」
「いつもなんて呼ばれてたっけ」

ドM、メガネ、ノッポとバリエーションは沢山あるよ。
その言葉に同情した友人。そして、掴んでいた髪の毛を離して跳ねているその真っ黒の髪の毛をてぐしで整えた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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