「あ、そっか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 廊下で楽しそうに話しているのは何時ぞやの友人のラブレターを渡しに来ていた一年生だった。高尾の友人だったかそうでなかったか、#name1#は定かでない記憶を思い起こそうと首を捻った。

「あ、そっか」

廊下の真ん中で独り言を呟き、何かに納得して無理やり口の端を持ち上げた。そのまま宮地と一年生に背を向けて早足で歩く。
下を向いていたためか、廊下を曲がった瞬間誰かとぶつかってしまった。普通吹っ飛ぶのはいちおう女の子である#name1#であるが、そんな常識は#name1#に通用せず。ぶつかった衝撃はお互いに相殺してしまったようで数歩、後ろに下がっただけである。

「あ、ごめんなさ……高尾くん?」
「あー!#name1#さんすんません!怪我ないっすか?手とか大丈夫です、か……え?」
「え?……あ、のこれ、は……」

早足で3歩、近づいた高尾は急いで#name1#の手を取り怪我がないか確認した。そしてもう1度謝ろうと顔を上げた時、高尾の頬に暖かいものが落ちたのだ。もちろん涎ではなかった。
#name1#の目の淵から零れ落ちた涙だった。

「あのね、これは、その……えっとね……ッ」

ボロボロと大粒の涙が頬を伝い高尾と#name1#自身の手に落ちていく。いつの間にかチャイムがなっており、生徒はもういない。
高尾は#name1#越しに教師がやってきているのが見え急いで隠れようと彼女の手を持ったまま歩き出す。が遅かったようで教師の大きな声が廊下に響く。授業中のクラスなどどうでもいいようだった。

「何サボっているんだ!早く教室に行きなさい!!」

チラリと#name1#を見るものの、彼女は顔を真っ赤に染めて高尾と繋がっていない方の手で涙を掬うのに必死になっていた。

「先生、この人体調悪いみたいなのでちょっと保健室に行こうとしてたんですよーその後授業出れそうだったら出るんで!また!」
「あ、おいこら!待ちなさい!」

#name1#の手を引いて高尾は一歩踏み出して走り出す。振り返りざまに教師にそう告げて#name1#の手を引く。

「#name1#さん、大丈夫?」
「……ごめ、ね……ごめッさ……」
「俺は大丈夫ですよ。保健室、行きますか?」
「……う、ん」

どうしたんすか、高尾のその声にしゃっくりを上げて#name1#は口を開いた。
話すのが億劫で辛いからか、高尾の手をきつく握っていた。

「ゆっくりで、いいし話すの辛いならいいですよ。無理しないでください」
「今更じゃないの。でもね、気づいてたのをずっとずっと押し込めてた。届かないの。手を伸ばしても前を走ってく『宮地くん』には届かないのよ」

ゆっくりゆっくり話す#name1#の言葉とともに彼女の歩みがどんどん遅くなっていく。しかしそれとは反対に涙は止まることなく重力に従って流れていく。
高尾は#name1#が宮地を名前で呼んだことに違和感を感じていた。
#name1#と出会ってまだ数ヶ月。ようやく春が終わるかと終わらないか微妙な時期が終わり夏を告げる梅雨が到来し始めた今。#name1#の行動や目線などにふとした時に違和感を感じる時がある。

「#name1#さん……」
「あ、保健室……ごめんねここまでついてこさせちゃって……ありがとう」
「はい。……#name1#さん、俺いつでも何でも聞きますから!だから、相談くらい聞きますからね!泣いても何も言いません反対に何も言えねぇんだけど……アドバイスとか気の利いたこと言えねぇし年下だけど、人に言ったらすっきりすることってあるっしょ?だから、だから」
「高尾くん、ありがとう」

ブンブンと手を勢いよく降った彼女は保健室に消えていった。
扉を後ろ手に閉め、大粒の涙を流す。そんな#name1#は保健医に心配されながらソファに座る。恋が実らないとか、そういう理由を言えずどうしたの、と聞かれても首を横にふるだけだった。

ーテスト、前触れだったんだ。

そう思い腰を折り、泣いた。
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