「変な妄想頭ん中でしてんじゃねぇよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 練習試合があればそんなの部活を休んででも宮地を全力で応援に行くのが#name1#である。勿論、部活を休む、というのはたとえ話で実際にそんなことをすることは滅多にないだろうが。

「清志くん」
「一つ聞いていいか」
「頑張ってね!私応援してるし、何ならこれ食べて」
「聞け」
「ちなみに、檸檬のはちみつ漬けという乙女チックなものを作ってみ」
「お前はなんで俺が試合なのを知っているんだよ!怖いから!」
「きゃっ、遮られちゃった。本当に照れ屋なんだから」

両頬を押さえて照れる#name1#に拳骨を飛ばす宮地。その瞬間に後悔するのだ。恍惚とした表情を浮かべて殴られたことを喜んでいるのだから。殴られちゃった、と星を飛ばしそうな勢いで言う始末である。
今日はいつにも増して元気でポジティブで浮かれている気がした。

「海常さん到着しました」

その言葉で、宮地を含め全員の雰囲気が変わる。ああ、これが選手なのだと、#name1#は改めて理解し、そそくさとベンチに移動しようと宮地の隣から離れた。その瞬間、海常の輪から腕が伸びてきて#name1#の手を掴む。
悲鳴を上げた彼女の前にたったのは海常のスタメン、森山である。

「ひっ!?」
「俺、今日は君のために頑張るよ!」
「へ?」
『は?』

海常はともかく、秀徳バスケ部の声が揃ったのだった。#name1#がいつも何をしているか理解しているからか、監督までもがアホヅラをさらし、いつも被害を受けている宮地は信じられないという顔をして手を掴んだ犯人を見やる。

「森山、やめろ!しばくぞ!」
「だって、見ろよ笠松!美人だ……」
「……いや、あの、えっと」

美人、と言う言葉にオーバーヒートを起こし、顔を真っ赤にさせてうつむく#name1#にキュンとしたのは森山だけではないだろう。人並みより大きい身長をしながらもそんなこと言われることなど本当にない。言われる方が珍しい。

「わ、私!清志くん一筋だから!」
「清志、くん?」
「はいはーい、この人でーす」
「高尾、テメッ」
「笠松ー、今日本当に頑張るわー」
「おー、頑張ってくれ。そしていつも頑張ってくれ」

恐ろしい剣幕で宮地を睨んだ森山は#name1#をみてにっこり微笑み名前を聞く。

「え、えと#name1##name2#、です」

いい加減手を離して欲しいのか、軽く振れば森山はより一層力を込めて握り直し、行ってくる!なんていうものだから#name1#はどうしたらいいかわからず秀徳側を困った顔で見る。

「ぶはっ#name1#さん顔顔!」
「何!?変な顔してる!?」
「めっちゃ真っ赤だし!」
「#name1#、良かったな」
「大坪くん、何が良かったのかな!?」

腹を抱えて笑う高尾の頭をむんずと掴みながら#name1#にグッドサインを出す大坪の横で宮地は何故か浮かない顔をしていた。木村に心配されながら笑ってはいるものの、視線の先にいるのは森山である。

「宮地ー?」
「何だよ」
「#name1#に何にも言わなくていいのか?」
「何いうんだよ、試しに木村が手本見せてくれ」
「いや、可笑しいだろ。何で俺が手本になんなきゃならねぇんだよ」

あきれ顔で宮地の肩から腕を外す。未だに#name1#の照れ顔を見て笑っている高尾に、そんな高尾を一瞥する緑間。緑間は黄瀬と何か話している。黄瀬が大人しい理由は緑間と話しているからだった。

「き、清志くん!」
「ああ?」
「私は、私は、清志くんしか、見えてないからっ!!!!」
「は?お、おう」
「だからその、頑張って!」
「お前に言われなくとも頑張るから」
「何ならその、勝ったら何でもするから!」
「変な妄想頭の中でしてんじゃねぇよ。やめてくれ刺すぞ」
「でも、本当に何でも言ってね」

始終笑っている#name1#を遠目から見つめる森山の視線に海常は呆れた。そして、宮地もまた#name1#の相手で疲れるのだった。
試合の結果は同点。練習試合ということでフリースローも何もしなかったが両者とも悔しそうに握手をしていた。

「引き分け、か」
「お疲れ様、清志くん」
「おー。タオルくれー、高尾」
「はい。言うと思って持ってきた。みんなの分もあるよーお疲れ様です」

笑ってタオルとドリンクを渡してくれる#name1#に少なからずその場にいた全員が驚いた。もちろん、彼女は通常通り宮地に一番にそれらを渡しに行ったし言葉も一番にかけた。しかしそれでも、みんなに平等にタオルを渡すなど#name1#がすると誰が思っただろうか。いや、誰もいないだろう。

「清志くん、かっこよかったです」
「ふーん、さんきゅ」
「でもね、森山くんが」
「#name1#、待て」
「?木村くんどうかした?」
「いつから苗字で呼んでんだ?」
「え、だって、あっちだって私のこと名前で呼んでくるから?あ、でも私は清志くんだけだよ?名前で呼ぶのなんて」

案外細かいところに気がつくのが木村で暴走した#name1#をとめるのが大坪、そして呆れる宮地でいつも構成されているメンバー。もちろん、今回も宮地が気にもとめなかったところを突っ込んでくるのが木村である。

「#name2#ちゃーん!」
「っ……も、森山くんお疲れ様」

もちろん、秀徳に向けたような笑ではない。少しばかり引き攣った笑である。#name1#本人はいつもこんなふうに宮地に駆け寄るが、自分がされるのは少し嫌らしい。しかし、#name1#も森山も何の自覚もないのだからタチが悪くしかも何度言っても聞かない。結局は似た者同士であるが。

「次は勝つよ!君の為に!」
「え、あ、うん」
「また会いたいな……連絡先を教えてくれないか」 「今携帯持ってないから」
「じゃあ、口頭でも構わないよ。覚えるからさ」
「私覚えてないの、ごめんなさい。清志くんのだったすぐに覚えられたになぁ」
「は!?お前……」
「何なら言ってあげようか、清志くんの電話番号とついったとメールアドレス。あ、ついったの裏垢も」

宮地はそんな彼女の口を塞ぎながら体育館を出ていく。高尾は相変わらずゲラゲラと笑い、黄瀬も含め海常は引き攣った顔でボソリと言うのだ。

「あいつ(あの人)も大変なんだな(スね)」

森山は宮地が出ていった先をにらみ1人悔しがっていた。

「なんなんスか、あの人」
「宮地さんのストーカーだ」
「へえ……勿体無いっスねぇ。性格に難ありの美人っスか」
「ふん、俺には関係ないのだよ」
「とかいいつつ気になってるくせに」
「気になってなどいない。おい、つつくな!」

とりあえず、海常のバスケ部員と監督は#name1#のことを深く記憶に自分の意思関係なく刻むこととなったのだった。

「やだー、清志くんったらっ……そんなに私と二人きりに」
「なりたくねぇから!」

宮地の言葉で木々に留まっていた鳥たちが飛んでいった。

。。。
美結様
少しでも海常組と絡ませられているといいです。ネタ提供ありがとうございました。
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