ゲーマー番外編 | ナノ
▼ 私が
「マサオ落ちた!!」
「お前、これ下手くそだよな」
「うるさい。ルリージー操作が簡単だからって……」
「いやいや、マサオとルリージー操作変わんねぇから」

ただいま、幸くんとテレビの前でマサオブラザーズをやっているわけだ。寝天堂の代表作である。赤と緑の兄弟がグッパという敵キャラを倒すRPG。

「私はマサオが苦手なんだよ」
「じゃあ何でやるんだ?」
「……さぁ?ゲーマーだからじゃないか?やらなきゃ気がすまん」
「そうか」
「あ、マサオのシャボン玉潰して!ルリージー!」
「ええ、めんどい。そのままついてこーい」
「ええええ!?」

画面の端でふよふよ浮く自分の操作キャラクタをただ見て幸くんがゴールするのを見守る。実質こっちの方が楽だと言ってもいいのだが何せ私はゲーマーなのだ。見てるだけではウズウズしてしまうのが嵯峨である。

「ゆーきーくーんー」
「んだよ」
「ひーまーだーあー」
「わかったから、もうちょっと待ってろ」
「えええー、暇暇暇暇ぁ!」
「待て」
「犬じゃないんだが……」

ため息をこぼし、コントローラーを机の上において麦茶をグラスの中に注ぐ。私はこの氷がグラスの中でなる音が好きだ。カランコロンと可愛らしい音を立てる氷を口に含み噛み砕いた。リビングでは幸くんがゲームを終えたのか電子音が聞こえなくなった。

「杏奈、俺も茶くれ」
「んーいうと思って持ってきてる」
「流石」
「あはは、褒めても何も出てこないぞ?」

ソファに体を沈めピコピコと今度は、DSなるものを始める。幸くんはそんな私の隣、実質床になるわけだがそこに寝転び、バスケの雑誌を眺める。
今でもバスケが好きな彼は友人たちと極希にバスケをしに出かけることがある。そんなの、できるのは本当に、一年に数える程度だ。と彼は言う。まだ一年丸々っと一緒にいるわけではないから知らないが。

「あー、バスケしてぇなぁ 」
「してこればいいじゃないか。私も付き合うぞ?」
「一人じゃできねぇし、お前の付き合うはベンチで涼んでるっていう付き合いだろ?」
「私は球技が壊滅的だからな。あ、死んだ」

GAME OVERと出た画面にやる気をなくしパタンとDSを閉じて仰向けに寝転ぶ。
私はスポーツ万能そうと言われるのだがそんなわけ無い。剣道以外、死んでる。脚は速いし、腕立て伏せや腹筋なんてお手の物だが、できない。この間はテニスをやってみたが見事にからぶってバスケを教えてもらったが全てゴールに入らないと言う始末だ。

「うーん、せめて男だったら君の相手をできたかもしれないのにね」
「お前馬鹿か。男だったらこうやって一緒にいねぇだろ」
「……それもそうか」
「お前はお前でいいの。何も悩まなくていいんだよ。俺はこれで幸せだから」
「……君は、まったく」

幸せなことを言ってくれる。きっと、幸くんよりも私の方が幸せだ。だって、幸くんがこうやって雑誌から顔をあげて私の髪の毛を弄ってくれるのも、手を繋いでくれるのも、全てが私の中では幸せなのだから。

「ばーか」
「何がだよ」
「幸せ過ぎてこっちは心臓張り裂けそうなんだ。君よりもよっぽど私の方が幸せ者だよ」
「は?」

下から吹き出す音がして何かと目を開ければ彼がクツクツと笑っているではないか。何故だ、私はそんなに変なことを言っただろうか。思い返してみてもそんなことないし、意味がわからないという顔をして見てやれば額を叩かれた。

「いてっ」
「お前、俺の方が幸せだっつの。お前が隣にいるだけで心臓うるせぇもん」

付き合って半年、離れていた時間を取り戻すかのように二人で床に寝そべり手を繋いで眠るのだった。 prev / next

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