thirtyfour 
存在してはならない人なんてないよ。
これは何のドラマ、アニメのセリフだったろうか。そんなことないよ。存在してはいけないものは確かに存在してはならないんだ。
ふらふらと歩いてさまよって、ついた先は駅。ああ、そっか。歩道橋よりももっとさっさと死ねるもの、あるじゃないか。たくさんの人に迷惑をかけて死ねる。そうだ、ここまで来たらやっぱりたくさんの人に迷惑を……私はこんなにも歪んでいたっけか。こんなに最低なことを考えるほど私は、ダメ人間だった?
たくさんの人に迷惑をかけて死ねる。なんて何を思ってるんだろう。ああ、ダメだ。
私、最低だ。


「……っふ…ぅ…ひっ」


私なんて消えちゃえばいいのに。


何コール目になるだろう。ずっとなり続けていた電話をようやくとった。


「ッはい」
『お、でたでた!じゃあ、みんな頼むわ。佐倉ちゃん、わかる?高尾だけど』
「だいじょ、ぶです」
『うん。動いてない?』
「はい、うご、てないです」
『うん、おけおけ』


それから高尾さんは他愛もない話をどんどん話していく。私の相槌もなくなったというのに、ずつと話していた。緑間さんのこと、先輩がどこに行った何をした、そんな話。私にとってはどうでもよくて、でも沈黙が続くよりはよくて、不安にもならなかった。


『あー、駅ついた。疲れたー佐倉ちゃんどこにいる?』
「噴水、の」
『おー、了解でっす見つけた見つけた』

「佐倉ちゃん、おまたせ」
「……けて」
「うん」
「助けて……」


私はこんなにも、弱い人間で一人で何も出来ない人間で、高尾さんの胸にしがみついて助けを求めることしかできない。
背中に回った腕は優しく私の背中を叩いてくれる。まるで母親が泣いている子供を落ち着けるかのように。


「助けて、苦しい、どうしたら、いいの」
「とりあえず、足痛いだろ?おぶされ、ほら」
「やだ」
「歩けねぇだろー」
「まだ、こうしててください……」
「……おう」


背中を叩き続けてくれた高尾さんに私はどれほど迷惑をかければ済むのだろう。口から漏れた言葉はありがとう、それと彼の優しさのおかげでこぼれ落ちた涙だった。
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