。。。
たまたまテツくんと歩いていて、たまたま帰っていた高尾くんと緑間くんに鉢合わせしただけ。久しぶりに会ったし飲みに行かないか、高尾くんのその言葉にテツくんと顔を見合わせてうなづいたのだった。
「で、緑間くん。結婚はいつなさるんですか?」
「ぶっ!!!?」
「うわ、真ちゃん汚ねぇ!こっち飛ばすなよ!」
「ゲホッゴホッ!く、黒子が悪いのだよ!俺は悪くない」
「ははは、私お手拭きもらってくるね」
「……ああ、すまない」
まあ、私たちの年になれば結婚の話なんてよく出てくるわけで。そう思うと高尾くんとかはすごいなぁと思う。もう、振られて連絡とることもできないのに高校の時からずっと想ってる子がいるだとか、緑間くんも高校の時の同級生の子。
ああ、でも一番恋愛歴長いのは私だ。テツくんはいつになったら返事をくれるのかな。好きだ好きだと伝えているのに、本当に彼自身に伝わっているのかわからない。
「すみません、お手拭き貰えますか?ちょっとこぼしてしまって」
「ああ、はーい、持ってきますね!」
「ありがとうございます」
「桃井さん、携帯なってますよ」
「あ、はーい。じゃあ、お願いしますね」
テツくんのその言葉に私はショルダーバッグの中で光っている携帯を出して手に取る。画面には佐倉頼ちゃん、の文字。あの子からかけてくるなんて滅多にないから少しだけ嬉しくて、だけど心がざわついた。滅多にしてこないからこそ、何か引っかかった。
『さつきさ、ん……助けて』
「え?……頼ちゃん?どうしたの?」
『助け、て……!』
「落ち着いて?ね?」
頼ちゃんは泣いているようで、嗚咽が混じっているその声に赤司くんと何かあったんだろうかと不安になった。頼ちゃんの精神はすごく不安定だと緑間くんに聞いたことがある。
「もーもちゃん、貸して?」
「高尾くん……でも、」
「ね?」
「うん……頼ちゃん、高尾くんと変わるね」
『は、い』
ああ、そういえば彼女はあった時からこんなふうに声をかすらせて泣いていたじゃないか。彼女が幸せになるのはいつになるのかわからない。
でも、こんな事考えて私はなんてお人好しなのだろう。他人の幸せなんて言ってしまえばどうだっていいじゃないか。
あの子は放っておけないのだ。
「はい、かわりました。高尾だけど、わかる?うん、そう。今どこにいるの?え?駅……」
高尾くんと頼ちゃんの会話。高尾くんの言葉しか聞き取ることの出来ないそれ。スピーカーにするには店内では失礼で、でも見守りたいということで移動もせずにずっと座っていた。
でも駅で頼ちゃん何するつもりなの。どこか行く宛があるのだろうか。
嫌な予感がこれだとしたら……背筋が凍った。
「……おお、そうか広場か。よかったぁ……うん。今から俺そこに行くから絶対動かないで。わかった?それから、俺の携帯で電話し直すから出て」
そこからの高尾くんは早かった。コート片手に携帯を取り出し耳に当てる。ワンコールでは出ないのか、訝しげに唸っていた。その間に緑間くんに赤司くんに連絡してもらうように頼んで、私たちは家に帰ることに。私の家に連れてくる予定だからと、テツくんと一緒に帰る。
「お、でたでた!じゃあ、みんな頼むわ」
ああ、赤司くんはこんな時に何してるの。
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