twentyone 
「え、でも本当にいいんですか?」
「うん、もちろん!あ、あのお店とかどうかな?」
「あ、可愛い……」
「入る?」
「お願いします……」


今日はさつきさんからのお誘いもあって買い物に来ている。付き合って、と言われながらも私が好きなお店を当ててはそこを回るため、もう私が付き合ってもらっている状態だ。
さつきさんはこうやってお買い物に女の子と一緒に行くという感覚があまりないらしい。何でも、青峰さんと済ませてしまうとか。


「あ、これ」
「可愛いねぇ。お揃いで買っちゃおっか!」
「へ?お揃い?」
「あ、嫌だった?嫌なら全然いいの!」
「いえ!違うんです。こうやって私もお友達というか、女の子と買い物に来ることなんてなかったのでお揃い、とか嬉しくて」


きっと今顔が真っ赤だ。嬉しくて少し興奮してる。さつきさんの顔がみるみるうちに崩れて二人で笑いあった。女の子の友達というのはこうやって遊ぶのかと実感する。こんなにいいものならもっと早くに知っておくべきだったと思いながら、でもきっとさつきさんじゃなきゃこんなに楽しくない。


「初の、お揃いです」
「えへへ、頼ちゃんのお初貰っちゃった」
「貰われちゃいました」


そんな会話が、楽しい。女子高校生に戻ったみたいだ。私も、さつきさんと同い年だったらもっと楽しかったのかもしれない。そう思うと自分の年齢を呪ったが、これだけ楽しかったらもうそれで十分な気がしたから、これでいいか。


「今つけちゃう?」
「今がいいですっ」
「……あはは、嬉しそう!」
「へ?そ、そうですか?」
「うん!私も嬉しいからその気持ち分かるよ」


色違いで買ったバレッタを付ける。
さつきさんのいうことは当たってる。
すごく、嬉しかった。
それは、当たり前の感情だった。女友達と滅多に買い物に行かない。お揃いの物を買うなんてもっての外。そんな私だったのだ。嬉しいのは当たり前だろう。


「ねぇ、疲れてない?」
「あ……」


さつきさんは、車椅子を押しているんだ。すっかり忘れていた。疲れているのは当たり前だ。


「あそこのカフェ、入りましょう。あそこまでは自分で行きますよ」
「でも、押してくよ?」
「たまには押したくなるときもあるんです。それに皆さんに頼ってばかりじゃ行けませんから」
「へ?そうなの?全然いいのに」
「そうなんです、ダメなんです」
「そっか」


女子高校生って、何してても笑えると聞く。今、本当にそれだ。
自分で車椅子を使ってさつきさんの後ろをついていく。そうだ、休憩がてらにさつきさんに【恋】というものを聞いてみよう。
中に入れば暖かくて、コートを脱いだ。椅子をどけてくれた店員さんに頭を下げて机の前に座る。


「何飲む?私、コーヒー飲もうかな?それと、ケーキ」
「あ、私もケーキ食べたいです」
「だったら、このセットのやつにしようよ」


私はチーズケーキ、さつきさんはガドーショコラを頼んでさぁ、いざガールズトーク。
でも、ガールズトークってどうやって切り出せばいいんだろうか。しことがないに等しい私にとってはハードルが高すぎる。


「頼ちゃん、赤司くんの家どう?」
「へ?あ、えっと……」
「優しい?赤司くん」
「はい、とても。私には勿体無いくらい優しいです」
「そっかぁ」


ニコニコ笑う彼女はとても可愛らしかった。こうやって真正面から見るとよりわかる。目が大きくて顔だって小さい。髪の毛だって手入れの行き届いている、キレイな髪だ。スタイルだっていいし女の子らしい。
大して私はどうだろう。あんな風に綺麗に笑えない。うまく笑えている自身なんてこれっぽっちもない。目だって顔だって、大きさは普通。全てが普通、もしくはそれ以下の自分がちっぽけな存在に感じた。


「でも、本当に驚いたな」
「何に、ですか?」
「頼ちゃんにも、赤司くんにも驚いた。だって、頼ちゃん来た当初なんて全く笑わなかったし何かに怯えているようだった。泣いてばかりで引け腰」


あまりにも素直なその言葉が心に突き刺さる。的をえてるその言葉は胸が軋む。


「でも、今は全然違う。赤司くんのおかげかな?」
「赤司くんの、おかげ……」
「うん。頼ちゃんは赤司くんのこと、好き?」
「え?ええ!?!?」
「あははは!その反応、好きなんだ?」
「えと、それが、よく分からなくて……」
「え?」


さつきさんに今まで彼氏がいたが、こんな気持ちになるのは初めてだということを伝えた。真剣に聞いてくれるのが少し嬉しくてどんどん思っていることを話した。
最近赤司くんを見ると顔が熱くなったり、胸が苦しくなったり、触れられたところからじわじわと熱くなる。そして、


「妹、と言われるととても胸が痛いんです……」


さつきさんは笑ってこう言った。


「頼ちゃん、それは紛れもない【恋】だよ」


額を弾かれて頭をなでられる。可愛い可愛いと言いながら頭をなでられた時、すごく胸が熱くなった。姉を持ったらこんな感じなのだろうか。
赤司くんに撫でられた時、そう思った。すごく安心したんだ。あの時だって、赤司くんを兄のように思っていた。でも、いつからだったろうか。
そう見れなくなったのは。
きっと、私は初めから赤司くんが好きなんだ。


「これが、恋……?」
「うん」


店員さんの声にわれに帰って、カラカラに乾いた喉に来たコーヒーを通した。



I know the love.
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