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買い物帰りの女性を見たんです。その人とは、会ったことがある気がして、目を細めてみると誰かわかって叫びました。



「佐倉さんッッ!!!!!!??」



彼女がいたはずの場所には丁寧に買物袋と靴が揃えられて置かれていました。
僕は震える手で携帯を操作しようとしましたが、指が震えて何もできません。そんな時近くをたまたま通りかかったのが緑間くんで、彼も彼女を見て目を見開いていました。
救急車に乗ったのは何年ぶりでしょうか。


―――――


「彼女は!」
「落ち着け」
「真太郎っ」


早くしろと、早く言えと、そう言った赤司は緑間の胸ぐらを掴み揺すった。こんなにも取り乱している赤司を見たのは緑間ももちろん、黒子も桃井も初めてのことだった


「佐倉さんは」
「 眠っている。外傷は酷いが生きてる」
「生き、てる?」
「 ああ」


赤司がなにかに執着する、ということは滅多になく、あったことと言えば勝利とバスケ、それくらいだろう。女の話など浮上したことはなかったし、執着しているということもない。だから、その場にいた三人、つまり黒子と桃井、緑間には理解ができなかった。


「会えるか?」
「面会謝絶だが」
「頼む」
「いくらお前の頼みだとしても無理なのだよ。また後日にしてくれないか」


その日、随分赤司は食い下がったが無理だとわかりうなだれて帰っていったのだった。残された二人は首を傾げ、扉の向こう側にいるボロボロの女性を思い浮かべた。面会謝絶なのは大きな怪我だからだけではなかったのを彼らは知っていたからだ。


「ねぇ、テツくん 」
「 はい」
「佐倉ちゃんは何であんなに切羽詰ってて、ボロボロになってたんだろう」
「 何故でしょうか?」


「痣だらけのあの体は確かに歩道橋から飛び降り車に跳ねられたからできたと考えてもいい。だが、明らかに腹などにできるはずはないのだよ。あの当たり方ではな」


そう言った友人の姿はもうそこにはなかったが、そう言い残したのが疑問だった。
あの傷は暴力を振られてなくてはできない場所にあると彼は言ったのだから。


それから毎日、赤司は花束を病院に届けたという知らせを聞いて緑間は驚いていた。そしてまた、その間も佐倉が目覚めないという報告に彼女を知っている誰もが少なからず落胆した。




Goodbye, my world.
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