▼ 別に寂しくなんか
お前はいつも寂しそうだな
素っ気ないその声にベッドから上体を起こす。一体どういうことだと睨みつけながら。
「心ココにあらずって感じだわ、お前抱いてると」
「何それ、意味わかんない」
青峰大輝とはいわゆるセフレというやつだ。ベッドの中だけの関係。
私はただただベッドで彼の下に組み敷かれ快楽を与えられる。その快楽に嬌声を上げて良がるだけ。その関係。
「お前、いつも何考えてんの」
ただ、私は青峰と天井を見る度に思うのだ。この関係から抜け出したい、これ以上に私は進みたいと。
それがきっと行けないのだろう。私のこの願いはおそらく叶うことはない。それを諦めてしまっているから?無理だとわかって願ってしまっているから?
「別に……」
「ま、どーでもいーけど」
そう言ってベッドに肩膝を乗せて私の肩を軽く押す。
ああ、まだするのか。さっきまで心ココにあらずって言ったじゃん。抱かないのかと思ったのに、あなたはその欲と快楽のためだけに私を抱くのね。
「や、だ」
「は?」
「やだって、いった……」
「聞こえる。何がやなんだよ」
「もう、この関係が、やだ」
何言ってるんだろう。この関係がなくなれば青峰大輝という男との関係は絶たれてしまう。私はこの男に恋というものをしたのだ。なのに、なぜ自ら離れるようなことを言っているのだろうか。
「意味わかんねぇよ」
「もうセフレはやだ……」
「お前……そういう事考えてたわけ。毎度毎度ヤってる時」
「半分正解で半分不正解」
「……そういうじれったいの嫌いだって知ってるだろうがよ」
目の淵から雫がこぼれて頬を伝って枕に落ちる。
「私はあなたを好きになっちゃったのよ」
例えもうあなたから連絡が来なくても、私の家に訪ねてくることがなくなっても私は強がるの。
「別に、寂しくなんかッ……」
週3、かかってきていた電話がパタリと止んだその日、泣きじゃくった。
所詮セフレとはそういうものだ。電話がかかってくるのを期待して実は待ってる。それが女の子。でも、男の子は違う。女の子はただの道具。
それを理解した日曜日、また私は同じ過ちを犯す。この想いをなくすために。
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