51話

電話の着信音が部屋に響く。誰かと画面を見れば岩泉一だった。

「はいはい、どうしたの」
『おま、及川に何した!?』
「え、何もしてないよ」

大きな声でそう叫ぶものだから、電話を耳から離す。かなり耳に響いて耳が痛い。
何もしないこともないかもしれない。お互いにお互い謝ることをしなかった私たちが謝ったのだ。仲直り、元通り、とは行かなくとも、お互い胸のつっかえが取れたはずだ。少なくとも私は何か引っかかっていたものが外れた気がする。小骨、的なものかな。

「でも、うん」
『あぁ!?何だ?』
「何でもないってば。何も無いよ」
『いーや、何かしたな。キモさがよりキモさを増してめちゃくちゃキモイぞ』
「キモイ何回言うの?」

一は相変わらず、徹の事になると騒がしい。いつもウザがってるけれど、それでもちょっとした変化だとかに気づく。ある意味本当にいいコンビだと思う。バレーに関しても日常に関しても。

「徹、元気」
『おま、お前もどうした!?』
「落ち着けぇー」

笑いがこみ上げてくる。ここ数日あまり心の底から笑っていなかった気がするものだから、とても楽しい。電話するのがとても楽しいなんて、思うことないと思ってた。

「お互いにね、謝ったんだ。今までごめんって。徹ね、気づいてた。私が避けてて、しかもその理由も」
『……ああ』
「それでね、お互いにお互い泣いて謝ったよ」

少なくとも私は泣いてた。徹は鼻声だったからどうだったかはわからないけれど。

『名前、戻したんだな』
「う、ん。何かずっと呼んでたのにもどかしいんだ。むずむずする」
『まぁ、お前らの仲が直ったならいい』
「はは、何だかんだで一、一番心配してくれてたもんね」
『んなことねぇよ』

それから徹がどうだ、部活で何を失敗したベンチ入りしただとかそんなことを沢山聞いた。もうすぐスタメンになりそうだと聞いた時は声が出なかったけれど。

「早くない?」
『IHはベンチ入りながら出るってよ』
「はっや。ホントアイツなんなんだろうねぇ」
『バケモンだろ』
「とかいいながら一もでしょう」
『でも及川ほど出ねぇよ』
「それでもスゴイ。頑張ってよー」
『敵応援していいのか?』

今更気づいた。
そういえば吹き出されてしまった。

『お前も青城こればよかったのに』
「うーん、多分それだったら徹と仲、直ってなかったと思う」
『そうか?』
「うん、私は音駒がいい。音駒でよかったっていまでも思う」

いろんな人たちに会うことが出来た。それが何よりも幸せなことだった。

「うちのも強いから、大丈夫」
『言うな。戦うかわかんねぇけど、戦ってみてぇ』
「うん。私もそう思う。でも勝つのは私たちだから」

そんなことを言い合い、通話を終える。早く、早く明日になれ。今すごくバレーがしたい。そう思った。
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