46話

「避けられてる……」

昨日家に行ったのがばあさんから伝わったのか、それともあの時起きてたか。だって、なぁ。寝返り打たれたし、もしかしてなんてあの時後悔したし。

「はあ……」
「#name1#ー、お前大丈夫か?」
「へーき。心配した?」
「したした!隣だしな」
「そか。ごめん、読み合せの時とか先生座ったっしょ」
「もう、最悪だったぞ」

ため息と重なったのはクラスメイトが#name2#を呼ぶ声だった。席替えをしたから隣は夜久じゃなくなっていた。夜久だったらまだこんな気持ち悪い思いしなくていいんだが。
それより#name2#があんなふうに話してくれないことが辛かった。


「お、やっと復帰かマネージャー様」
「あ、ああ鉄朗。うん、今日から、行くし」

会話はそれだけ。それから逃げるようにどこかへ行ってしまった#name2#。引き留めればよかったんだがその時は避けられてるなんて思わなかった。強いていうなら挙動不審だなぁ、だとかそんなん。
そしたら話そうとするとすぐにどこかに行くし、女子と話だそうと背を向けられるしで、ようやく理解した。

「あー、くそ。あ?」

こんな時に誰だよ。
ケツのポケットに入っている携帯を出せば通知が1件。授業中なったら最悪だったパターンだな、これ。昼休みでよかった。

「朝比奈……?」

『私、今日#name2#ちゃんにちゃんと言うね』

その短く簡潔なそれにスタンプを押し、携帯をもう一度、今度は胸ポケットにしまおうとしたが、止めた。それから、こう打った。

『夜久は、どうすんだ』
『学校から伝わるよね?みんなに』
『本当にそれでいいんだな』
『うん』
『後悔、無いのか』
『仕方ないから』

それ以降、既読がつくことも、文字がそこに出てくることもなかった。多分、アイツはアイツなりに色々大変なんだろうな。
事情を知っているのは今のことろ俺だけか。
まだ朝比奈が#name2#に言っていなかったことが驚きだった。言いにくいことだから仕方の無いことなのかもしれない。
ただ、先延ばしにすることが辛いことは誰でもわかることだ。だが、分かっていてもそれを必ずできるとは限らない。言いにくいことは、そうなってしまいがちなのだから。

「黒尾ー先輩が呼んでるぞ」
「んー」
「カッコ女の先輩な」
「ふーん」
「相変わらずお前そういうのに興味ねぇよな」
「いや、うーん。なぁ?」
「わっかんねぇよ」

背中を思いっきり叩かれてイテッなんて情けない声がでる。ニコニコ教室の前で待っていたのは二年生か三年生、多分三年生だろう。
廊下に出てだるそうに言ってしまった。が、本人はそこまできにしてないらしい。

「なんすか」
「ここじゃなんだからちょっといいかな?」
「 わかりました」

人通りの少ない体育館の横。昼休みだからか、こんな所にわざわざ来る生徒なんて誰もいない。

「あのね、うじうじ言ってても面倒くさいだけだし言わせてもらうね。私……黒尾くんが好きなんだ。付き合って欲しい」

真剣な顔だった。
ただ、バレー馬鹿である自分と付き合ってこの人は果たして幸せになるのかというと多分なれないのだろう。いつもそうだ。付き合っていようがバレー優先してしまう俺に対してもう少しかまって欲しい、と言っていた。少しそういうのは面倒くさいだけだ。

「すみません」

分かってた。
目の前の先輩はそう言って笑ってた。頭を下げて立ち去ってから振り返る。分かってる。こちらに背を向けて泣いてることくらい、分かってるつもりだった。ただ、やっぱり傷つけてしまったことが罪悪感を生む。悲しいのは彼女のはずなのに、フッた俺も悲しいなんて馬鹿な話だ。
それでも、告白されてる最中頭の中に出てきたのは今日の#name2#の態度についてだった。
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テーマ「人外ファンタジー」
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