45話
まるまる2日、学校を休んで全快。
そして今日、学校について部活に行こうと思ったのだが、何度頭を振ってもあの言葉が、冷たい手のひらが、甦るのだ。何故私の家に来ていたの、とかそんなことを聞きたかったのに。約束ごめんね、とか言いたいのに。
「なんで避けるの、私……」
そんなこと言ってる場合じゃないってことわかってるのに。ちゃんといろいろ言わなきゃって言うのもわかってるのに。
「言えないぃ……」
頭を抱えてみたところで、何の解決にもならず、ただただ鉄朗を避けてしまうだけである。一向に解決しそうにない私の悩みはどうすれば良いのだろうか。こんな時に、梨花がいてくれればなんて考えてみるけれど、いないものは仕方がなかった。本当はこんなことしたくないのに、してしまうというのは全く人間らしいものである。
「あれ……」
着信が入ったのはそれからすぐの事である。
「梨花……?」
そこに書かれていた名前は朝比奈梨花であった。人ごみから外れて、廊下の壁に背をあずける。
「もし、もし?大丈夫なの?」
『 いきなりでゴメンね、大丈夫だよ。ねぇ、#name2#ちゃん。今日会える?』
「えっと、いつ?」
『部活終わってからでいいの』
「遅くなるよ?」
『ぜーんぜん平気!場所はね−』
声に覇気がなかった。それなのに無理やり出しているんだろう、と思うような話し方だった。空元気、というやつだ。聞いていてこっちが悲しくなるそれ。一体彼女に何があったのだろうか。
切れた電話を片手に握りしめて、もやもやする胸に押し付ける。
「キャパオーバーだ、私」
何にって言われても具体的には言えないけれど、梨花の苦しそうなでも無理やり出しているような声に、鉄朗が家に来ていて頭を、その……撫でてくれたこととか。全部全部、もやもやして胸焼けのような気持ち悪さがあった。
「あ、#name1#!」
「夜久、お久しぶりです」
「って、二日前だろお前。久しぶりって言わねぇよそれ」
「そっか」
「?どうかしたのか」
「あー、えっと」
夜久に言ってもいいのだろうか。俺も行く、なんて野暮なことは言わないだろうがそれでも気になって私の口から梨花が話すべきことを言わなきゃいけなくなってしまうかもしれない。だったら、黙っておくべきだろう。
「何でもないよ」
「そ?ならいいけど。お前今日から来んの?大丈夫か?」
「へーきですよーだ。この通り元気元気」
「無理すんなよ?」
「うん」
本当にお母さんだわ、夜久。
「あ」
「どした?」
「あのさ、とある人を避けちゃっててさ」
「黒尾を避けて焦ってる、と」
「待って、名前出してない!」
「お前らなぁ」
−本当にわかり易すぎるぞ
その言葉に俯いたのは、頬が熱くなったから。鉄朗だとバレてるのが恥ずかしい。そしてお互いわかりやすい、ということも。
昼休み、教室に戻ると女の先輩であろう人に呼び出されてどこかへ行ってしまった鉄朗がいた。何だか、その背中を見て私はいつか彼に置いていかれる、そんな気がした。