44話

インターホンを恐る恐る押すと出てきたのは#name2#のばあさんらしき女性だった。

「あら」
「こんばんは、初めまして。同じクラスの黒尾鉄朗です。あの、#name2#……さんは」
「ああ、#name2#ね?#name2#は今眠ったばかりだわ、ごめんなさいね」
「そう、ですか」
「でも……お時間はある?お話、しませんか」

何故だろう、そのまま帰ったって良かったのにうなづいてしまったのは。
ニコニコ笑っているばあさんは部屋に入った途端頭を下げた。

「ごめんなさいね」
「え?」
「あなた、昨日#name2#と遊びに行く約束をしていた人でしょう?」

何故知ってるのか、そんなことはどうでも良かったが何故謝るのだろう。そんなことを思った時に、そう言えばと#name2#から来ていたメッセージを思い出した。
『祖母が倒れた。待ち合わせの場所に行けなくて本当にごめんなさい』
冗談ではないことくらいわかってた。変な意地張って既読もつけずに無視していたら気まづくて結局黙ってこの家に来た。

「私が昨日ね、倒れちゃったの。大事はないのよ、でも#name2#は私のそばにずっといてくれてね……それで行けなかったみたい。あなたに迷惑をかけてしまったこと本当に許して欲しい」
「そんな、こと……大丈夫です。寧ろ、俺の方こそすみません」
「倒れるなんて誰も予測してなかったもの、私自身もびっくりだったわ」

それから#name2#のばあちゃんは笑ってプリンを出してくれた。俺は通り道のコンビニで買ったプリンを出した。#name2#ように買ったものだが、同時に出したものだから笑ってしまった。
とても気さくな人で、話しやすい人柄だった。
#name2#の話をずっとしてくれる目の前の人はどこか当たり前だが#name2#に似ていた。いや、#name2#が似ているというべきか、こういうときは。

「#name2#のこと、バレー部に誘ってくれたのはあなたかしら?」
「あ、はい」
「じゃあ、黒尾くんだ」
「え?」
「ふふ、いつも#name2#が話してくれるから。ビックリした?」
「 はい」

まず、そういう話をしなさそうに見えていたが、そうでもないらしい。

「見えないでしょう、あの子。可愛くない性格してるって言われるみたいだから」
「え?そんな、こと……は」
「あら。それ、今度#name2#に言ってあげて」

言えるわけがない、そんな言葉を飲み込んでうなづく事しかできなかった。しかし、それにしても気さくな人である。こういう所はあまり#name2#に似ていない、というかなんというか。
#name2#の父親がアメリカにいて寂しい思いをしていただとか、幼なじみが二人いてよく夏休みにこっちに来ただとか。そんな話を沢山してくれた。

「でも、嬉しいわ。徹くんや一くん以外の男の子の友達ができるなんて」

一クンってのは分かった。徹クンってのは及川クンの事だというのも、何故か分かってしまった。徹、という言葉は何度かあいつの口から聞いてしまったことはあった。“及川”といつも呼んでいるはずの名前が“徹”と呼ばれるといつも以上に胸焼けのような感覚があったのは確かだ。違和感しか覚えないその呼び方は、イラりともさせた。

「今までは一くんと徹くんがいればいいって言ってた子だから。バレーもね、徹くんが教えてくれたのよ」
「そうなんですか」
「ええ。でもねぇ、中学三年生の最後、酷い負け方をしてバレーが一時期嫌いになったみたいよ。今は平気みたいなんだけどね」

その言葉にふ、と頭をよぎった言葉があった。

ー俺は#name2#をバレー部に誘ってよかったのか

目の前で寝苦しそうに眠っている#name2#に問うことが出来なければ問う勇気もなかった。誘われたくなかった、なんて言われてみろ。最悪だ。

「早く元気になれよ……バーカ」

顔にかかってる髪の毛を払って、撫でてやれば寝返りを打ったものだからすぐに手を引っ込めた。
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