41話
どこかで、待ってたんだ。君が来てくれるのを、抱きしめてくれるのを、名前を呼んでくれるのを。でも、私からは何も言えなくて、彼は何もしてこない。それは当たり前だった。だって私が悪いから。分かってる。でも、それでも、待っていた私は本当に馬鹿なんだ。
「……負けた」
「ぶひゃひゃひゃひゃ!」
「何その不細工な笑い方」
「ぶふっ、ぶひゃひゃひゃひゃ!!」
「殴っていいかな」
「いい、俺が許す」
「#name1##name2#いきまーす」
僅差で負けた。あれから、3日。着々とテストは待つことも知らず返ってきた。時には勝って時には負けてそんな感じ。でもまぁ、負けましたよ。
手を挙げて降参ポーズをすればふと笑うのをやめて真剣な顔になった彼の口から飛び出したのはその場にいた夜久も私も固まるような言い方。
「日曜10時、公園の噴水前」
それから、すぐに背を向けて脱兎のごとくどこかに行った彼。いや走ってったわけじゃないけれど、すごく大股の早歩きだった。
「夜久」
「何だ」
「私自惚れてもいいかな?これもしかしてもしかするとデートかな?」
「自惚れていいと思う、けど」
直立不動での会話。口しか動かないように魔法を黒尾鉄朗という男にかけられたような、そんな気がした。それほどまでに驚いた。私たち二人共、そんな感じ。
「私、明日何着ていこう。ジャージダメだよね」
「アウトだろ」
「だよね、Tシャツ短パン?」
「部屋着で行くなよ」
こういう時に梨花に電話したいんだけど、出来ないし。もう休んで1週間。噂では大きな病気にかかったとかかかってないとか。
「ああああ、梨花に聞きたいぃぃ」
「朝比奈、来ねぇよな」
「うん……」
梨花の家、行こうかな。部活が休みな時にってダメだ。鉄朗との約束入っちゃった。
「てか、日曜日部活ないの?」
「ん?あー、練習試合あったから休みにしてやるって。充分休めってさ」
「そか」
私聞いてないし、後で確認取ろうかな。マネージャーとして知らないのはちょっとな。
「マジで服どうしようかな」
「母親とかは?最悪父親」
「母親は宮城にいるし、父親はアメリカ」
「は?アメリカ?」
「そそ。バスケのコーチしてる」
「はぁ……じゃあ、お前は誰と暮らしてるんだ?1人なのか?」
「一人はちょっと。家事全般ダメだから。祖母と今は一緒にいるよ」
はぁ、と夜久は感心するように声を上げ、彼を呼んだ友達の方へと走っていってしまった。
あ、私一人だ
鉄朗も梨花も夜久もいなかったら私一人なんだ。ずっと、3人といたからかな。夜久みたいに笑って隣にいれる、輪に入れる、なんてこと出来ないんだ。今までは絶対はなれないとでも言えようか、一がいたし、最悪及川もいた。気づいたらすごく寂しい。
「梨花、来ないかなぁ……」
一人って寂しいんだ。凄くいまさらだけどさ、及川も一もいてくれてありがとう。今日は電話、こっちからしようかな。