39話

「#name1#」

肩を叩かれて振り向けば頬に突き刺さる指。痛い痛い。

「先輩。どうしたんですか?」
「いやー?あいつら仲良くなってんのな」
「 そうですねぇ」

吹き出す音と頭に手が乗ったのは同時だった。何故先輩が笑っているのか理解出来たなかったし、頭を軽く撫でられてる、叩かれてる?のかも理解出来ない。先輩どうした。

「行けばいいのに、羨ましいなら」
「うッ……」
「違ったか?男に生まれてきたかったーなんて馬鹿なこと考えてるんだろ?」
「うぅ……」
「俺はやだよ、#name1#が男とか。だってこうやってマネしててくれてないかもしれないし寧ろ出会えてなかったかもだし」

その言葉が少し嬉しかった。その言葉、なんだかこの間も鉄朗に言われた気がする。私ってかなりわかりやすいのか。と言うか、表に出すぎというかなんというか。

「それでも、たまに男の子の視点で見てみたいって思うんですよね。男の子だったらもっと身長高かったのかな、とか思いますし」
「じゃあ、見てみる?」
「は?え、ちょッぎゃぁぁああああああ!!!!!」

一気に目線が高くなったと思ったら足がついておらず不安定で、しかも怖い。持ち上げた先輩は先輩でゲラゲラ笑ってるし。

「ぶっ!あははははは、あはははは!」
「な、何笑って揺れてる!先輩揺れてるから!笑う度に揺れてるぅぅぅぅううう!」
「ぶほっ!ぎゃぁぁああって、ぎゃぁぁああって言ったよこの子!女かよ、本当に!」
「プラーンってなってますってば!下ろしてくださいよぉぉぉおお」

持ち上げられて、しかも抱っことかそういう青春見た男なことじゃなくて犬猫だっこするみたいに脇の下に手を入れられて持ち上げられてる。脇地味に痛いんですけど!

「まぁまぁ、落ち着け」
「先輩が落ち着いてください」
「おう!!?あ、黒尾か。誰かと思ったよ」
「何血迷ってそれ、持ち上げてるんですか」
「血迷っ!?」
「血迷ってないよ、ただ、#name1#が男目線で世界を見たいからって」

待って、私の言葉を遮らないで。悲しくなるから。それとわざわざ持ち上げられてる理由言わなくていいですしなんでそんなに鉄朗顔怖いのよ!怒ってるじゃないですか。

「おー!楽しそうじゃん!せんぱーい!俺もしてください!」
「お前は充分でかいだろうがぁあ!」
「ぎゃー!痛い痛い!」
「木兔、一回黙れ」

この時に既に木兔くんは170以上はあったらしいのでそりゃでかいわ。羨ましい、鉄朗といい木兔くんと言い、でかいんだよ。夜久を見習え夜久を。

「で、#name1#!視界はどうだ?良好か?」
「りょ、良好です」
「よし、じゃあどうだ?180cmと同じ目線になったのは」

「鉄朗と同じくらいの目線だ……鉄朗っていっつもこんなふうに見てたんだね……地面、遠い。天井は相変わらず遠いけど、きっとブロックした時とか快感だろうね」

鉄朗と木兔くんもだけど、目線が同じくらいで、すごく嬉しかった、けど視線が恥ずかしい。

「お前は何でも黒尾だな」
「何か言いましたか?先輩、下ろしてください」
「えー」
「えー、はこっちですよ!下ろしてくださいってば!」
「はいはい、どーぞ」

不安定だった足がようやく地面についた時、自分の脇腹の痛さにダイエットをしようと決意するのだった。それから、今度は犬猫を抱き上げる時に脇の下に手を入れて抱き上げるのやめてあげよう。きっと彼らも痛いはずだ。
こんな事言ったらバカみたいと鼻で笑われそうだが、事実痛いはずだ。いや、私だけかもしれないけれど。

「お前、持ち上げて欲しいならいつでも言ったらいいのに。持ち上げてやるぞ?」
「もういいの、満足」
「ふーん、そ」
「うん、そう」

クシャリと私の頭を乱暴に撫ぜた彼は木兎くんの方に行ってしまった。
少し、寂しいと感じたのは純粋に男になりたいと思ったからだろうか。それとも不安定な感情の上に成り立っているものからだろうか。そんなもの、わからないけれどとにかく寂しかった。

「バカ」
「ねぇねぇ」
「おぅふ、雪絵ちゃんかおりちゃん、どうかした?」

腰に抱きついてきたのは雪絵ちゃんで、それをひっペがすのがかおりちゃん。

「夏休み前の合宿くる〜?」
「ああ、勿論行くよ」
「本当?だったら、そこでもまたよろしくね!」
「当たり前でしょ?そんな事言ったら私のこともよろしくね?知らないこととか多いから」

まず、合宿があるということに驚きが隠せないのですが。まぁ、私たちの時もあったしそりゃあるか。収集が選手の方にかかって私たちはそそくさと自分のチームの方に行く。雪絵ちゃんはゆっくりだけど、かおりちゃんごそれを引っ張ってるのが面白い。そしてそれを指さす木兎くんが殴られてるのがまた面白い。きっと、梟谷って面白いんだろうな。選手としてもマネージャーとしても。きっと。

「さて、もう一度再戦してきますか」
「頑張ってくださいね」

勝ってこいとは言わないから、せめて1セットでもとってください。そんな意味を込めて、彼らの背中を見送った。
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