38話

木兎くんは、どうしてもと先輩に懇願して連れてきてもらったらしい。ベンチ入りのメはンバーではなく、マネージャーのようなものだそうだ。とは言っても、すごく真剣に見てるからあまり仕事してないのだけれど。すごくバレーが好きなんだろうな。

「木兎くーん、そっちのボールとってくれない?」
「んー」
「 ダメだな、張り付いてるや。雪絵ちゃーん」
「あぁ、これー?いいよぉ」
「ありがと」

まぁ、彼はマネージャーじゃないのだからいいか。そうやって思いつつ少し働いて欲しいなぁと思いつつ、まぁいいのだけど。
試合終了。まぁ、負けてしまったのだけれど、鉄朗を見ると結構怖い顔をしている。入りたくてうずうずしているのだろう。私から見ても、二年の先輩の中で鉄朗より下手くそだという人はいる。
でもそれでも、笑って時には怒って奮い立ってコートの中で精一杯頑張ってる。だから何も言えない、言わない。

「お疲れ様です」
「ありがとう」
「どうぞ」
「サンキュ」
「お疲れ様です」
「ん」

1年生はコートの整備をする為にせっせこ走り回っているはずなのに、走り回っているのは鉄朗、夜久、海の3人だけ。あとの1年は適当だ。彼らももしかしたら今の二年生のようになるのかもしれない。だとしたら、悲しいな。みんなにとって気持ちいい部活にして欲しいのに。一部だけ楽しくて、一部だけ辛いのは悲しいのを彼らはきっと知らないのだろう。

「ちょっと、ちゃんとしてよ」
「悪い悪い」

絶対思ってないわ、これ。注意してもヘラヘラ笑って面倒くさいなんていいながらテキトウに仕事をしていく。私は、こういうテキトウに仕事をする人が苦手だ。見ていて、他人に迷惑をかけているなんて思ってないんだろうなぁとイラつく。少しは他人にも注意を向けて自分が今何をすべきか、ということくらいわかって欲しい。じゃないと、ちゃんとしている人にとても迷惑だ。

「#name1#、顔怖いぞ」

眉間のシワ、と自分の眉間を指さす夜久の仕草に私は額を隠した。

「あいつらのことは仕方ないって目を瞑るしかないんだ。先輩に言われても適当だから」
「そっか……」
「ん」

眉間、凄かったぞ
そう言って笑った彼の背中を軽く叩いてやった。

「馬鹿力っ」
「酷い!」
「元気だせよ〜、お前が辛気臭い顔してると黒尾の機嫌が悪くなるんだよ」
「はは、何それ。でも、うん。笑っとく」
「そーしてくれ」

ケラケラ笑いながら背を向け歩いて行く。そんな彼を黒尾が叩いて何か言っている。蹴り返されていたが。悲鳴を上げて笑っている2人を見て私も男だったら、なんて思ってしまう。
男だったらあそこに紛れれる。こういうことを及川達といて何度思っただろうか。
羨ましい、何度もそう思った。

。。。

やーくーくーん

その声に振り向けば#name1#のように背中を黒尾が叩く。#name1#より痛いぞ、この野郎。いや、当たり前だけれども。それよりも皆して俺の背中を叩くなよ。痛いから。

「なーに喋ってたのよ、夜久さん」
「ノリがウザイ」
「なんかもう酷い」
「別に、お前のこと」
「俺?」
「そう、お前」

ニヘラァ、とだらし無く笑う黒尾が気持ち悪くてさっきのお返しと言わんばかりに蹴ってやる。痛い痛いとゲラゲラ笑いながら言うものだから2人して叩いて蹴ってを繰り返した。

「おーい、お前ら1年生?1年生だよな!」
「2年だったらどうするんだ、お前」
「え"!?2年生っすか!?!?」
「違うけど」
「なんだよ驚かすなよ……」

目の前のやつは何か知らないけれど、ベンチメンバーでもなければマネージャーでもないらしい。のに、来てる。本当によくわからない。

「俺、木兎光太郎!お前らは?」
「俺は黒尾鉄朗」
「俺は夜久衛輔。あ、海ー!ちょっとこっち来いよー」
「ん?ああ、何?……初めまして」
「おう!初めましてー!俺は木兎光太郎」
「海伸行です。よろしく、えっと、1年?」

そんな俺らをいつも#name1#が羨ましい顔で見てるのは知ってた。そこら辺の女子とは何か違う、言ってしまえば変人だと思う。どこが?って聞かれてしまうと言葉に詰まるのだけど、とりあえず変人だと思う。
まぁ、そんな彼女に先輩が話しかけたのはそれからすぐの話。
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -