36話

机の上に伏せておいてあるスマートフォンから電話を知らせるバイブレーション。触らないようにと伏せておいておいたのに全く誰だ。

「 鉄朗くんですか」
『は?何か言った?』
「何でも。何かあった?」
『おー、お前さ数学の問題集の問の―』

わかる?その問に机の上に散らばっている教材を漁って数学の問題集を引っ張り出す。生物をしていたから今私の頭の中は生物一色なんだけど。まぁ、飽きてきてたからいいけど。

「ああ、これか。わかるよ、このまま解説した方がいい?ノート写メって送った方がいい?」
『できればどっちも。僕馬鹿だからわからないんですぅ』
「電話切ってもいい」
『あ、すみません、だから切らないでくれ』

馬鹿な会話を終えて自身が解いたノートを見ながら解説をする。ちらりと時計を見ればもう3時。流石に体に悪いし、そろそろ眠たくなってきた。鉄朗に説明したら眠ろうかな。

「それで、展開したのを」
『おお、それでこの答えになるのか』
「そそ。わかった?写メ送るから、頑張ってね」
『いや、俺もう寝るわ。そろそろ限界が近い』
「そりゃあ私と同じだね。送ったら寝る。おやすみ」
『おやすみ……なぁ』
「何!?」

切ろうとして話しかけられるのは驚くから辞めてください。
何と聞いてから一向に返事が返ってこない。あー、えー、なんてずっと電話越しに聞こえるうなり声。まだわからないところ、あるのだろうか。というか、数学二日目だし明日聞いたらいいのに。凄いなぁ、私なんて明日の教科勉強するので手一杯だったのに。
まぁ、一週間前からやってたおかげで私も数学のテキストわからないところは付箋が貼ってあるけど。数学苦手すぎて辛い。

『寝るまで電話してね?』
「ごめん、もう一度言ってもらえますか?」
『はぁ?……寝るまで電話しませんか、#name2#ちゃんや』
「……いいよ」

こういうの、及川ともしてた。一は長電話苦手だからそんなにしなかったけど。さっき歯磨きしておいてよかった。電話しながらシャカシャカシャカ、とかすごく個人的には嫌だ。

『こういうのって及川クンともしたの?』
「うん。……なんで?」
『気になっただけ』
「そっか」

テーブルランプを消してベッドに横になる。充電器を携帯にぶっ刺してまた話し出す。私は答えるだけだけど。

『#name2#ちゃんがテストやる気出すように賭けをしようか』
「なーに、その少女漫画みたいなノリ。変なのやめてよ」
『勿論。まぁ、そこは王道いくぞ。負けた方が勝った側のいうこと聞くことな』
「はい王道ー」

そんなこと言いながらも少しはやる気が出るものだ。何してやろう。まぁ、鉄朗は大方バレーのことだとして私は……まぁ、その場になってから決めようかな。勝つことを目標に頑張ろうか。
まぁ、勝てるかわからないけれども。

『お前さ、楽しい?今』
「へ?何で……」
『俺が、無理やり男バレのマネ誘ったからさ』
「弱気な黒尾くんだね。楽しくない」
『マジで!?』
「なわけないでしょ。これでも楽しく学校生活送ってますよ〜」

絶対今マジで、で鉄朗ベッドから飛び起きたと思う。何だか容易に鉄朗の顔を想像することが出来た。まるで目の前にいるみたいだ。

『何笑ってんだよ』
「今絶対頭掻いたでしょ」
『何でわかるんだよ。#name2#は俺のストーカーですかー』
「うわー、ストーカー扱いはないわぁ」

これ、眠れるのだろうか。寝たふりしたらどうなるのだろうか。

『ずっと聞きたかったんだけど、お前及川クンのこと本当は……おーい?おい?』

何、及川クンのこととって何。鉄朗は何聞こうとしてるの。って眠ろうとして目を閉じて息を付せば本当に眠たくなってきた。最後の方、聞こえないや。

「聞こえ、てるよ」
『もう、眠くなったのかよ』
「結構、話したでしょ」
『まぁな。おやすみ、#name2#』

限界だった。電話って相手から切れればこっちも自動的に切れるっけ、覚えてないや。これで繋がってるのか嫌だよ、私。お休みって、言ったっけ。言えてなかったら明日謝ろう。

『お前が及川クンのこと好きでも、俺は……』
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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