34話

徹ちゃん、初めはそう呼んでいた。
出会ったが近くというか、隣で親同士が仲が良かったから。
なんでそんな事考えているのか、きっと研磨と鉄朗を見てるから。

「じゃあ、また」

鉄朗の家の前を通り過ぎて、家に帰れば置き手紙が一枚。
―ばあちゃん、温泉旅行行ってくる。商店街のくじ引き当たったものだから。遊んだりするのはいいけど健全なお付き合いを。3日ほど行ってきます

何を書いているんだこの人は。健全なお付き合いって何。まず、付き合ってる人いないし、周りに不埒なことするような人いないからね。何をばあちゃんは言ってるんだか。

「はぁ……」

冬には掘炬燵になるそこに足を入れて寝転ぶ。そういえばこうやって家にひとりでいることなんてなかなかないな。自分が子供だということもあり、親が2人でどこかに出かける時には必ず及川の家か、一の家にいた。あずけられた、の方が適当だろうか。
親同士仲が良く、子供も仲が良かった。もう過去形なそれは、私が壊してしまったのかもしれない。いや、壊したのだ。
徹、と呼んでいたものを及川、に変えた。避けた、嫌った。及川はそういうものに敏感なはずなのに、気付いていないと思ってた私は馬鹿だ。
いや、違う。及川の意図に気づかなかった私が馬鹿なんだ。

「本当に馬鹿。私たち長くいすぎたんだよ多分」

気の節目が見える天井に手を伸ばしてすぐに落とす。

「さみしい」

まだ、私はオイカワトオルという男への気持を忘れることが出来ていないのかもしれない。

。。。

公園で転んで大泣きしている女の子がいた。周りの女の子の髪の毛が長いのにその子はいつもボーイッシュで括れるくらいの長さじゃなかった。正直いって似合ってないし、絶対長いほうがいいのにと思う顔立ちだった。

「だいじょうぶ?」
「いたいぃぃぃい!」
「おかあさんは?」

何を聞いても痛い痛いと泣きわめく彼女を初めは面倒くさいと思った。男みたいだし服も顔も砂と泥で汚い。なんて言うか、岩ちゃんみたいな感じ。岩ちゃんも虫取りあみ持ってきった無い格好して帰ってきてた。俺はそれを見てて笑うだけだったけれど。

「とりあえずたてる?」
「いたい」
「じゃあ、おかあさんさがしてくるからじっとしててよ」

コクコク簡単にうなづいた彼女は血だらけの膝小僧に息をかけて泣いていた。
それからお母さんらしき人を見つけて彼女の前に案内したら#name2#という名前だとわかった。慌てたお母さんが立たせて水道まで抱き上げていった記憶がある。

「なんなの、あの子」

お母さんに抱き上げられた瞬間泣いてクシャクシャだった顔が嘘だったように笑ったのだ。不細工なはずなのに、可愛いわけでも何でもないはずなのに、何故か目が離せなかった。また泣きそうな君の笑顔に心配になったけれど、それでもその笑顔がすごく印象的で心に残った。

「おいかわとおる!君は?」
「……ママー変な子がいる!」

え、それ俺?って最初は思ったよ。それから自分の名前を名乗った彼女はゲラゲラと笑ってまた走り出した。俺の目にはとっても可愛い女の子じゃなくて、すごくゲラゲラ笑う本当にこの子は女の子なのかと疑うような子だということだけだった。
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