31話
もう早いもので、中間考査がはじまる。まだまだ、高校に入って遊びたい頃。つまりは、勉強なんてしていないし、夜中もずっと携帯いじったり本を読んだり。そんな毎日を送っている。きっとあっという間に考査なんて終わってしまうだろう。そして、勉強しないでもう1週間。もうあと4日程で始まってしまう。
「#name2#……勉強してんの」
「全然……鉄朗は?」
「まぁまぁ?」
「疑問形ってことは何もしてないってことだよね」
ははは、なんて軽く笑ってからうなだれる。別に頭が悪いというわけではない。至って標準だけれど、勉強しててそれである。勉強してなければすべてがきっと平均以下だろう。もしかしたら、 赤点……なんてことがあるかもしれない。そんなことにはなりたくない。
「明日勉強会、するか?」
「どこで」
「お前の家か俺の家か夜久の家」
ごめん、夜久とばっちりだわ。
「え、俺もするの?」
「何だよ、お前らは勉強してんのか?」
「やってない」
「夜久、清々しいね。いいと思うよ、そういうところ」
「……おう」
三人でため息。もうため息と笑いしか出てこないのはやばいサインだろう。
でも正直良かった、夜久がいてくれて。最近鉄朗と話すのも一杯一杯になってきている気がする。要するに、キャパシティオーバーってやつだ。話している途中で会話がふと途切れる時がある。その時は何故だかとても恥ずかしくてよくわからない感情でいっぱいになってしまう。これが恋なのか恋じゃないのかは曖昧だ。
「おーい?#name1#?」
「ぁ、ごめん。やるところ決まった?」
「おー。夜久の家になったけどいいか?」
「いいけど行き方知らない。どうしたらいい?」
「黒尾と来いよ」
夜久、お前は鬼か。
「俺?」
「#name1#は宮城から来たんだし、道以前に地区がわからないけど、お前ならどこの地区だって言ったらわかるだろ?」
「あー……そういうことな。わかるわかる。じゃあ、一緒に行くか」
「んー、了解」
頷くので精一杯。
鉄朗と一緒に行くのか、なんて考えると本当に意味のわからない感情が浮かんでくる。もやもやして気持ちが悪い。正直スッキリしたくて言おうと思ったこともあったけれど、やめた。やっぱりまだ私にはこの感情はいらない気がするから。
今は好きとかそういうのはいらない。それはもう宿泊研修の時からわかっていること。ただ、私は私に笑いかけてくれるそんな人が隣にいてほしいだけ。
「んじゃ明日の日曜から始めて後はー……黒尾の家でやるか。月曜からは学校もちゃんとあるし」
「了解です。いい?鉄朗」
「俺の家はいつでもウェルカムです」
「よーし、頑張ろうか。正直メチャクチャ詰め込んで頑張れば4日あれば巻き返せる!…と思う」
正直自信なんてないけれど、やらないよりはましだ。
―恋ってなんだろう
机に座って頬杖付いて、考えてみる。聞ける人もいなくて、聞くのも恥ずかしくて。全く恋に興味無さそうな人に聞きても意味、ないよね。でも聞いてみようかな。
「……もしもし?」
《#name2#?久しぶり》
「久しぶり〜元気にしてる?」
《おう》
「あいつは?」
《まぁまぁ?この間は中学行って後輩いじめて笑ってたぞ》
「十分に元気じゃん!」
壁に凭れて口を押さえて笑う。まるで一が目の前にいてくれている気がして。とても落ち着いた。久々の電話は、とてもとても気持ちが良かった。
《で、何があった》
「んー?」
《はぐらかすなよ。お前が無駄にテンション高い時は何かあった時なんだよ》
バレバレだ。きっと一だけじゃなくて、及川に電話したってわかってしまうことだった。別に構わないけれど、ここまであからさまにわかるとは思ってなかったな。そんなに自分はわかりやすいのだろうか。
「バレバレだ、ね」
《相談か?俺でよければ聞くぞ》
「流石、我らの一様だ」
《成ったつもりはねぇよ。寧ろなりたくねぇ》
「だろうね」
そんな彼に『恋』の話を切り出すのはもう少しあとのこと。