30話

卓球は結局私達は双子に任せて負けました。とりあえず、すごく悔しい。夜久と悔しいと言い合い、相手側と握手をして床に座る。


「双子ー!行けー!」
「お前、双子って……」
「ほら、夜久も応援するよ」
「 わかったよ。双子ー頑張れ!」
「夜久も双子って言ってんじゃん」
「俺はいいの」
「意味わかんない」


双子強!
後に聞いた話だけれど、あの双子はちょっと卓球界では有名だとか有名でないとか。何か大会行って優勝何度もしてるとかしてないとか。そんなことを小耳に挟んだ。何でも2人して3.4歳から卓球をしているらしい。
反則にならないのだろうか。体育委員に聞くと


「えー、いーんじゃないのー。だってここには習い事ダメーなんて書いてないしー……書いてあるのは部活だけですしー」
「あ、うん。ありがとう」
「どーいたしましてー」


相変わらず間延びしてるなぁ。何か気が抜けるよ。
まあ、ズルをしているというわけではないから彼らが優勝しても何も文句は言われないらしい。ただ何故だろう、素直に喜べないのは。心境は微妙だ。


「まぁ、優勝したんだから喜んでいいんだ……よね?」
「いいだろ、たぶん」
「微妙だわ……」
「俺もだよ。終わったし、黒尾の方見に行く?」
「え、まだやってるかな?」
「まぁ、見に行ったらわかるだろ」
「そっか。じゃあ、行こうか」


体育館を出て、バスケがされている体育館に向かう。何ともまぁ、豪勢な高校だろうか。体育館がいくつあったかな。まだ覚えきれていないのはきっと私だけじゃないはずだ。


「なぁ、すごい歓声聞こえねえか?」
「うん、気のせいだと思ってた。てか、思いたい……」
「黒尾くーん、とか気のせいだよな」
「そういうことにしておこうよ」


体育館の中に入ってそれが気のせいではないことがすぐにわかった。名前を呼ばれて応援されているのは鉄朗だ。勝っているのもうちのクラスだ。鉄朗って、スポーツ万能なんだろうか。確か頭も良かったはずだ。それに顔もよければモテモテになるわけだ。


「うわ……すごい」
「だな」


ギャラリーがすごくて、コートに立ってる人たちみんながキラキラしている気がした。楽しそうにプレイしているその姿は羨ましかった。
鉄朗ってスポーツ万能なんだろうか?確か頭も良かったはずだ。それに顔もよければモテモテになるわけだ。
なんていうか、


「次元が違うっていうか……」
「なんか言ったか?」
「んん、夜久は気にしなくていいんだよ」
「?そうか」
「うん」


次元がどうだとかそんなのどうでもいいのに、気になってしまう。ああ、むしゃくしゃする。鉄朗の他にも○○くんだとか、応援されているのに鉄朗の名前が出ると本当に気になるしイライラする。


「て、鉄朗くーん!頑張れ!」
「え……」


今、鉄朗くんって呼んでた?呼んだ女の子、可愛いなぁ。自分と比べたらみんな可愛いや。羨ましいな、ああやってキラキラ輝いている子って。
自分も女の子の輪の中にいたらあんなふうになれたろうか。きっと、ああいう女の子って女の子の輪の中で恋バナとかしてた子なんだろうな。自分とは全く違う。沢山恋をしてたくさん話してたんだろうな。そう思うと自分ってなんて狭い世界で恋して悲しんでたんだろう。バカバカしくなる。


『きゃぁぁあああ!ダンクしたよ!かっこいい!』


本当、格好よくて嫌になる。胸が痛い。


「鉄朗の、バカ」


違う馬鹿なのは自分だ。


「――だよ、コノヤロー」


きっと、認めなきゃ勿体ない感情だ。ていうか、認めろって心の中で誰かが言ってる気がする。なんだか悔しいな。
随分長いあいだ一緒にいた気がしたのにまだまだ出会ってばかりだ。それなのに惹かれるってどれだけ鉄朗がかっこよく私の目に映ったんだか。


「あ、終わる……」


近くにいた子の言葉とブザービーターが重なった。


「本当、かっこよすぎだよバカ」


まだまだまとまるのは先の話。
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