27話

球技大会、当日であるが何とも微妙な気分である。理由は先日の及川からの電話だった。なんであんなこと言ってしまったんだろう。恥ずかしさと微妙な行き場のない心境で悶々するのだ。


「バレー怪我したって!」
「え、誰?」
「知らねぇけど足捻ったって……」
「え、オレ倒れたって聞いたけど?」
「え、やばくない?予選でしょ、今」
「予選は通ったらしいんだけどさ―」


そんな会話に聞き耳を立てる。わかったのは誰かが怪我をしたこととバレーが予選を通ったことだけ。つまりは今からの本選に出れないと言ってもいい。本選に出る、というのは一年二年三年の中から予選で勝ち上がったニクラスで順位を争う物だ。一年は私のクラスとどこかのクラスが勝ち残ったらしいが……出れないとなると棄権か?補欠、は休み。
とまぁ、そんな気楽に考えていた私の前で頭を下げているバレー部リーダーは何なんだろうか。


「自己紹介の時#name1#ちゃん、バレー部だったっていってたよね!?おねがいします!バレー出てください」
「いや、あの……」
「こんなに頑張ったんだもの!お願いよ」
「えっと……」
『お願いします』


うなづく他ない。でも、苦手だ。毎日立っていたはずのそこに立つのがまだ怖い。前から人が居なくなる、とか想像するとゾッとする。


「なーに怖い顔してんだよ」
「 鉄朗」
「もうちっと楽しそうにしろ。つまんなそうにおもうと本当につまんなくなんぞ」
「う、ん」
「我らがバレー部の実力を見せてやれ!」
「いや、私マネージャーだし」
「そこ気にすんなー」


ケラケラ笑う鉄朗につられて私も笑う。
鉄朗の言う通りだ。楽しそうな顔をしなくては。あの時のことを後悔したってもう遅い。終わったことなのだからとやかく言ったって意味のないこと。


「ありがと!行ってくる」


名前を呼んでいるチームメイトに駆け寄って円陣を組む。


「勝とうね!ファイ」
『おー!』


今回も、ちゃん届けるよ。ボールを貴方達の元に返す。セッターとか、レフトとか決まってない。運動神経がいい子がスパイクしたりトスしたり。誰がやるかなんて決まっていない、ちぐはぐなチーム。だけど、ボールを届けたり返したりすることくらい、私にだってできる。


「頑張ろうね」
「うん。ってあれ、梨香は?」
「梨香が倒れちゃったんだ……」
「ウソ……梨香が?夜久たちは?」
「夜久くん?夜久くんなら黒尾くんと歩いてたよ」
「もう、馬鹿……」


早く終わらせなきゃ、早く終わらせて夜久と鉄朗に知らせて保健室に行こう。心配でモヤモヤしながらコートに立つ。眩しい照明、背の高いネット。周りにいる人たち。いろいろな部活が使っているから、いろいろな匂いがする。それさえも懐かしい。何故だろう、体育館なんていつでも来ているのに。とても懐かしく感じるのは、白線の中に入ったからだ。


「梨香の分もちゃんと頑張る」


―ボールを落としたら終わりだと思うんだ。たとえそれが最初の一手でも、それが落ちてしまえば試合が終ってしまうと思うくらいに考えるんだ。いいね、#name2#


「こんな時にあんたの言葉思い出すとか、私も末期ね」


一体私は及川に何を求めているんだろう。電話してから私、変だ。
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