1話
周りの高校からの推薦。あの大会の後、すぐに部活をやめた。怖かった。
北川第一中。私はそこのリベロで、ナカマにボールを届ける仕事をする。どれだけブロックに弾かれても、スパイクが来ても、とってセッターに繋げるのが私の役目。私はどれだけ望んでもスパイカーみたいに空を飛んで、ボールを手のひらに力一杯当てることはない。私はただひたすら我武者羅にボールに手を伸ばすだけ。
「…先輩」
「飛雄。どうかした?」
「悔しいんですか?」
「うん、悔しい。でも、いいや。もう」
そう言って私の隣に立っているその子は眉間にしわを寄せた。私にとってバレーって何だったんだろうかと、最近考えるようになった。
「頑張っても、前に誰もいないのは悲しいよ」
どれだけ蔑まれても、バレーをやれば変わるんだと思っていた。でも、そんなことなかった。低身長を生かしたリベロ。体重もそこらの子よりも軽くてバネがあった。才能があると言われてやり始めたリベロ。まぁ、そんな簡単に行くはずがなく。天才と言われる飛雄とは違って私はコツコツ努力型だった。派手なシュチュエーションは出来ない。地味に地味に手を伸ばしてボールを取る。触る。ただ上げるだけでも構わない。取り敢えず、ひたすらボールに向かって走っていった。
「あれ、#name2#?」
「及川。何?」
「高校、決まった?」
わざわざこちらまで走ってきたその男を私は嫌っていた。
この男が私にバレーを教えた。バレーの楽しさを。逃げるな。前を向け。そう言ったのがこの男だった。私はこの男が嫌いだった。
「さぁ?何で」
この男のせいで私はバレーをしていた。お前はチビだから。それを活かしてみない?そう言って誘ったお前はどんどん前に行ってしまった。置いていったのはお前だ。
「まだ決まってないなら、俺と青葉城西に行かないかなーっなんて」
「……」
「岩ちゃんもいくよ?」
「一が行くの?じゃあ、考えとく」
「なにそれ!酷くない?及川さん泣いちゃうよ?」
どうでもいいから、早く離れて欲しい。
泣きたいなら泣けばいい。
「……違う高校かもね。私達」
私#name1##name2#と及川徹、そしてもう一人、岩泉一幼馴染みという分類にいた。別に好きでいたわけじゃない。中学もここが近くて、しかもバレーが強かったからと言う理由で入った。
「え―な、なんで!?」
「理由、言っていいの?」
「女の子がそんな顔しないの!」
ああ、私はこういう扱いが嫌いなんだ。誰にでもフレンドリーに優しくて、いつの間にか私の隣に居てくれなくなったこの男が嫌なんだ。
「うるさい」
でも、そう思うとよく昔は三人で遊んだと思う。一と及川と私とで小さい時から一緒で、バレーに誘われて、誘われるがままにボールに触って。
「怖いってば。で、一緒に来ないの?」
「考えとくって今言ったでしょう?あんたの耳は飾り物なの?」
「いぃいいいだいってば!痛い痛い!!」
「及川」
「はぁ はぁ はぁ」
「ばいばい」
耳を離し、そのまま及川に背を向けた。もともと青葉城西に行くつもりだったし一と同じならそれでいいと思った。でも、やっぱり嫌だ。コイツだけはもう一緒にいたくない。
だから、サヨナラしよう