10話

前で新入生代表が挨拶を、校長、生徒会長。でも記憶にあるのは本日は、だけ。他は知らないし覚えてもいない。理由は簡単、寝ていたから。ちなみに隣の男の子はちゃんと起きていた。えらいと思う。髪の短い、小さめの男の子だった。
そして、教室に帰ると席も隣だった。鉄朗とは同じクラスだが、席が少し遠い。


「あ、お前、寝てたろ」
「うん」
「入学式くらい起きとけよ」
「眠かったから。人間の本能には勝てなかった」
「あっそ」


肩をあげて苦笑いしているこの男の子の名前は夜久衛輔というなんともかっこいい名前の持ち主だった。


「夜久くん。夜久くんって呼びにくいから夜久でいい?」
「ん、別になんでもいいよ」
「本当?ならもりもり」
「待てどっから来た」
「衛輔」
「夜久でいい!」


先生が教卓の前にたって自己紹介を始めた。名前と担当教科を言った女性の教師は優しそうに見えた。良かった。隣のクラスはえらく怖そうな厳つい男の人だったのだから。あれは明らかに体育教師だろう。


「ねぇ、夜久」
「んー?」
「何でもなーい」
「お前……はぁ」


私の席は廊下側で後ろから二番目。斜め前は女の子、前は男の子。後ろ斜めとその隣は女の子。鉄朗の隣は優しそうな女の子。楽しそうに話しているのが少し羨ましい。鉄朗は窓側の通路側の席。しかも幸いなことに後ろ。あんなのが前に来たら、黒板が見えないだろう。迷惑極まりない大きさだ。


「ほら、HRだから自己紹介しましょう」


そう言った先生は自己紹介をするように促した。自己紹介とはシャイな子にとったら地獄のようなものなのだろう。現に斜め後ろの女の子は小さく悲鳴をあげていた。可哀想に、私も苦手だが。


「じゃあ、どうぞ」


始まった自己紹介。席的に私はまだまだだが何を言おうか迷うな。みんなが言っているのは出身校や趣味。まぁ、そんなものだろう、自己紹介って言うのは。


「黒尾鉄朗でーす。趣味はバレーボール。えっと、宜しくお願いします」


なんとも短い紹介なんだ。前の人達はもっと話していたというのに。異常に短かった気がするのは私だけなのか。ヘラヘラした笑いを浮かべながら頭を下げる鉄朗。
顔がいい鉄朗。今の笑みで何人の女の子は彼を好くのだろう。悔しい。私の方が鉄朗に会ったの早いのに多分鉄朗は違う女の子を好きになって彼女にするのだろう。まるで鉄朗が好きになっているみたいだ、私。


「夜久衛輔です。好きなものは――」


もうここまで来たのか。夜久まで来たってことは後ろの怯えている子が次という事だ。


「頑張れ」


椅子を後ろに倒して斜め後ろのその子に言ってあげると小さくうなづいたのが見えた。愛嬌のある可愛い子だと思う。眼鏡っ子で、でも笑うと笑窪ができるそんな子。


「あ、朝比奈梨花、です」


ちゃんと言えるじゃんか。親指を立てて笑いかけると朝比奈ちゃんも笑顔になったのだった。やっぱり
可愛い。笑窪出来る子って可愛い。そしてどんどん回って次私の番。


「#name1##name2#です。宮城から来たんで訛ってたらすみません。えっと、中学ではバレーをしていてポジはリベロでした。これからよろしくお願いします」


頭を下げて椅子に座ると夜久が食いついてきた。リベロ、と言う単語に。


「俺も、リベロ!」


その言葉に目を見開いて笑った。
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