9話



「そっか幼馴染みか」
「んだよ、お前もあれだ、及川クンと一クンとは幼馴染なんだろ?」


そう言われて考えてみると、一は大好きなお兄ちゃんみたいな感じだった。けど、及川はどうだろう。そんな風に思ったことはあっても、お兄ちゃんって思ったことなかった。ただ、一度だけ思ったのは好きなのかもしれないということ。


「一は大好きなお兄ちゃんみないな?でもまあ、及川は幼馴染ってより近所のイケメンなお友達、みたいな?」
「そうなのか?」
「ていうか、うざったい友人」
「ぶふっ」


たまに思うんだけど、黒尾の笑いのツボがどこなのか掴めていないんだよね。そんな私にとっては何故?としか思ってあげられない。いつか理解してあげたいけど無理な気がする。
孤爪は携帯でゲームをしている。ちなみにさっきはゲームの話で少しだけ盛り上がり、君付けが取れたのだった。本当は研磨と呼びたいのだが、流石にそこまでの仲にはならなかった為無理だった。


「そんなこと言ったらクロも笑いのツボおかしいし、胡散臭いじゃん」
「ぶっ」
「え、俺?そんなことないって」


ケロリと答えるのがまた面白い。笑いをいきなり止めて孤爪を見る。携帯から顔をあげて私の顔を見る孤爪は違う?とでも言いたいのか。首を横にかしげたのだ。


「か……」
「え?」
「可愛い」
「!!!!??」


猫が毛を逆立てるような、そんな雰囲気の孤爪。


「こんな可愛い弟欲しかった」


是非、研磨と呼ばせてください。そう言うと控え目にいいよ、と返ってきたものだから嬉しくてガッツポーズをした程だった。


「おい」
「ん?何、黒尾」
「俺は?」


述語抜けていて、何が俺が、なのかわかってあげられないんだけど。どうしたらいいんだろうか。分からないという表情を汲み取ってくれたのか、溜息をつきながら小さくつぶやいたのだ。


「……………………名前」


実際見ると、本当にイジけていて、子供のようだった。椅子に逆に座って背もたれの所に腕を組んで置いていた彼はその腕の中に顔を隠す。


「またそれ言ってる」


黒尾が研磨の面倒見ていたものだと思っていたけれど、反対だったのかもしれない。



「鉄朗ー」



言われて呼んだの、初めてだ。



「ト、トイレ」



あ、研磨行っちゃった。
それより、顔半分見えていた鉄朗の顔はもう腕の中に全て入り込み見えなくなっている。一切反応が無いというのも凄く恥ずかしいのだけれども。


「黒尾ー?」
「名前がいい」
「子供か。鉄朗」
「んだよ」
「ふふ、照れてんの」
「うっせーよ」


実は寝癖だった、という事実だった頭を手のひらで撫でる。固そうなそれは案の定固くて。これは確かに直らないわ、なかなか。寝癖名が治らないのが悩みっていうのがすごいと思う。気にしているのだろうか。


「固いね。男の子の頭ってこんなもんなの」
「そういうお前はふわふわだよな」
「えー、クセ毛嫌だ。雨の日爆発するし」


片腕だけ伸びてきて私の髪の毛を弄ぶ大きな手。長くて固い手。私ももう少し長い手だったらチームメイトを助けられたろうか。


「そうか?じゃあ、ポニーテールにしちまえよ」
「冬、寒い」
「マフラー巻いとけ」


流石に長居してはいけないと思い立ち上がる。しかし、お母様はいつ帰ってくるのだろうか。随分長いお買い物だ。行ってもう既に1時間近く行っているはずだ。


「今日はありがとう」
「帰んのか?晩飯食ってったらいいのに」
「いや、初対面でそれはちょっとね。今度またちゃんと挨拶するよ。うちんち、ばあちゃんいるから」


次、学校でね。
次からはこうやって毎日会えるのが嬉しい、楽しみ。少し子供のようにスキップをしたくなった。
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