短編 | ナノ
ナミダのアメ



姉が、死んだ。

姉には一人の彼氏がいた。結婚も約束していた、そんな人。

私はその人が大好きだった。もちろん異性として意識していた。彼とは高校の時からの付き合いで、姉を紹介した時正直後悔した。紹介した時からどんどん親密な関係になっていくその二人に泣きそうになった。

姉が、死んだ。

姉には彼氏がいた。その人の名前は赤司征十郎。バスケ部の主将を一年生からしていて、生徒会長までこなす完璧主義な人である。

初めて、赤司くんが泣いている姿を見た。

姉は愛されていた。


「赤司くん……」
「クッ、ゥ……フ、ゥッッ」


私の手を握って泣くのは、私が姉に似ているから。私は姉の代わり。征くん、そう呼べば赤司くんは振り向いてくれるのだろうか。

ううん、無理。絶対に無理。


「赤司くん、ごめんね。ごめんなさい……ッ」


姉は、イジメられていた。

赤司くんの親衛隊から。私はそれに気付かないふりをしていた。最低な、女。運がよければ別れてくれるかも、なんて思ってしまった。


「何故、謝るんだい?」
「姉が死んだのは、私のせいだから……話くらい、聞いてあげたら良かった」


そう言っても、涙が一滴も出ない。それはきっと、外が大雨だから。この雨は私の心の中。ぽっかり空いた穴に、突き刺さるように降るアメ。まるで槍みたいに傷をえぐる。

赤司くんの視線が、槍だ。


「俺も、気づいていたさ。話も聞いていた」
「え?」
「放っておけば、いつかは止まる、と。あいつは言ったんだ……クソッ」


悪態をつきながら私の手をきつく握る。痛みが勝ってきた頃、赤司くんは壁を拳で殴った。

姉が、死んだ。

自殺だった。お風呂で、手首と首元を包丁で切って。シャワーを出しっ放しで。一時間はたっぷり浸かる姉が、1時間風呂から出てこないのは全く疑わなかった。


「赤司くん、早く新しい恋をしたら?そしたら」
「巫山戯たことは言わないでくれ。俺は、彼女しか愛せない」


だから、姉の死体を発見したとき少しだけ嬉しかった。やった、赤司くんの彼女になれる。姉の代わりでもいい。それでもいいから、愛されたい。

そんなの無理だ。だって、赤司くんは姉を愛しているから。


愛されたまま死んだ彼女に、私は一生追いつけない。



一部文章:確かに恋だった
。。。。。。。。。。。。
赤司くんアンケートでよく名前が上がります。まず、夢主ちゃんが少しだけ狂っているのを目標に最後はグチャッと終わらせるのを目標にしました。気に入っていただけると嬉しいです。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -