真っ白なフィルム | ナノ


  ご


久々にできた休日って、いきなり何をしようと悩んでもやることが見つからないことが多い。
忙しい時でこそ、たくさん出てくるというのにこういう時に限って出てこなかった。


『……ドライブでも、するかな』


私の家は普通の一軒家。でも、ちょっとだけ広い家だ。
ちなみに玲央の家とは違って本当にぐしゃぐしゃ。片付けてもまた汚くなるので取り敢えず洗濯物だけ片付け、車の鍵を手に取る。サングラス、帽子、日焼け止めをして準備万端で家を出た。


****


『静かー……』


来ている人といえば小さな子供やジョギングしている方々、それに親子。
小さくてここら辺ではかなり珍しい緑が多い公園だ。


『ふぅ……落ち着きますねぇ』


読みかけてきた本を開く。
子供達の声とその両親の声がよく聞こえた。風が通り抜ける音もだ。


だいぶ読みふけっていただろうか。ふ、と本から顔を上げると私が見ていた親子とはまた違う子供とお父さんだろうか。どうやら息子とバスケットをしているようだ。
三、四才くらいだろうか。キャッキャッと笑ってお父さんと遊んでいる。


『わぁお、イケメンさんだ』


片眼が髪で隠れているイケメンさん。身長も高い。
その時、子供が石に躓いたのか転んだ。やはり小さい子にとっては痛いのだ。どんな些細なことでも、転ぶと痛いと親に訴える。


「ぁああーん!わぁぁああ!」


「Oh!Are you OK?!」


まさかの外人。


「いだいぃー」


あれ?息子日本人?
いやどっからどう見ても、東洋人の顔してるよね、息子。いやでも、お父さんも結構……


「あー…あー、ごめんね?平気かい?痛い?」


あ、帰国子女か、多分。学校で習っただけでは出ないであろう滑らかな発音、焦った時にだけ出るその英語は長年の癖なのだろう。
イケメンさんはどうしたらいいのかわからないのかオロオロと焦っている。


『あちゃー…… 』


読んでいたところに持っていた栞を挟みお父さんと遊んでいた息子くんのところに少し駆け足で向かった。


『君君!お名前は?』


「っ……へ?…ひむろ…そーた」


『そうか、そーた君か。よし、お姉ちゃんと一緒にお歌唄おっか!』


「ぉ、う、た?」


『うん。何が好きかな?』


ボロボロとまだ涙は出ているが大きな声は収まり、今はしゃくりを上げ小さい声ながら私と話してくれる。


「おやしゃいレンジャー」


何だろう。野菜?野菜の戦隊モノなの?どんなのだよ、一体。今度見てみよう。


『お姉ちゃんにどんなお歌か教えてくれる?そしたら一緒にお歌唄おっか』


「うん!」


そういってそーた君は野菜レンジャーの歌を歌い出す。
やはりネーミングが変わっているだけあり歌も変わっていたが笑わなかった私はすごいと思う。
ちらりとお父さんを見ればほっ、としていた。


『よし、お姉ちゃんと歌おう!せーのっ』


「きょーからきみもおやしゃいをー、美味しくたべましゅ、むしゃむしゃとー!」


でもいい歌。小さい頃好き嫌いが激しかった私は全く野菜を食べない子だった。
だから、こういうのがあっていいなぁ、と思う。


歌い終わったときそーた君がこう言ったのだ。本当に子供とはよく周りを見ていると思う。


「おねーちゃ、テレビにでてるひと?」


『おお、バレちゃった!うん。そうだよー』


「わぁあ、すっごーい!パパ、パパ!このひと、げーのーじんだよ!」


あまりにも可愛いその姿に思わず頬を緩ませてしまう自分がいる。
お父さんに似てきっとイケメンさんに育つだろう。


「そうなの?すみません……忙しいところ」


『あ、いえ。私が勝手にやったコトですから』


「しかし……」


『お一人ですか?』


「え?」


まだ謝りそうな彼、だから話題をわざわざ変えた。謝られてばかりでは嬉しくない。


「いや、上司と来ていたのですが……どこかに行かれてしまって」


『そうですか……お、どうしたの?』


「おねーちゃ、抱っこ、抱っこ」


『よしよし』


「あ、颯太!やめなさい」


『いいですよー、おいでおいで』


手を広げるとその中に突撃してくる颯太くんは可愛い。父に似ると男の子はダメだというのを聞いたことがあるけれど、可愛いものは正義だろう。


「す、すいません……本当」


『氷室さん!私、謝られるより違う方を言われた方が嬉しいです』


「え、何で名前……違う方?」


『英語で言うとThank youとかですよ』


「あ……ありがとうございます」


『いいえ!』


颯太くんを抱っこしたまま軽くジャンプをする。
こういう時に年だなぁ、と思ってしまう。昔のように高く飛ぶことができない。


「パパ、みて!えへへ」


「いいね、ほら、颯太。おいで?パパもしてあげる」


「やー!おねーちゃんがいいの!」


そう言って私の首元にプニプニとした子供らしい手を巻き付ける。氷室さんは苦笑いを一つ、私は笑いを一つこぼした。


「光!!」


その時目に入ったのは赤い髪の毛と金の瞳でした。

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