に
『れお〜えへへ〜』
「もう、アンタもう止めときなさい。たいしてお酒強くないのに」
『飲まないでやってられるかぁ〜!』
「あ、寝た」
『スー……スー……』
「はぁ、毎回運ぶ者の身にもなってちょうだい」
****
夢を見た。
正直なんの夢かは覚えてない。ただ、夢を見て、その夢が少しだけ悲しくて、起きたとき虚しかったことだけわかる。
『んぁ?玲央ー?』
仕事に行ったのか静か。
相変わらず、綺麗な家。私の家なんて服とか散らばってて片付けてる体力なんてないから、散らかりっぱなしだ。
二日酔いにならないところが私のいいところだと思うんだよね。寝るまで潰れたのに頭は痛くなったことは今まで一度もない。
『あれ……玲央』
リビングの机の上に突っ伏して寝ている。何も羽織らず寝ているものだから急いで寝室にあったブランケットを持ってくる。
近くに木でもあるのか、はたまた壁に止まっているのか定かではないが蝉の鳴き声が家の中にまできこえている。
『冷房効いてるんだから……』
布団までお洒落なのだから嫌になる。今度家の中の家具見繕ってもらおう。
「ん……あれ?アタシ、ねてた?」
寝起きで少し呂律が回ってないがどうやら状況をすぐに理解したらしい。
しまった……そうつぶやき椅子から立ち上がる。
『起こしちゃったね』
「いいのよ。寧ろ有難いわ。今日も蝉、うるさいわね」
『近くに木でもあるの?』
「ええ。毎日うるさくて……」
『大変だね』
顔を洗いに行ったのか洗面所に消える玲央。私は着替えようと思い、着替えを出す。
もう私玲央と一緒に住もうかな……。
玲央の家にもう私の服が置いてある時点でいいと思うんだよね。
『玲央ー』
「んー?」
『朝ごはん何がいい』
「簡単なものでいいわよ。というか作るわよ?」
『たまには私が作るよ』
いつも作ってもらっているのだ。たまには私がつくろうと思う。
『玲央仕事、何が入ったわけ?』
「んー?ジェーンさんっているじゃない?」
『あの有名な?』
ジェーンさんとは所謂ハリウッド女優だ。その人のパーティードレスをどうやら手がけていたらしい。
エプロンを着て、玲央が開いているパソコンの前まで行く。
「パーティーと今度ほら、映画公開で着るんだって」
たくさんの形、色がパソコンの画面に写っていた。
マーメイド、シャンパンドレス、エンパイア、スレンダー、それに加えゴールドやシルバー、ブルーなどのアイディアがスケッチブックに書かれている。
これを昨日の夜から考えて結局、オールするところだったようだ。
『ジェーンさん細いから、スレンダーラインかなぁ』
「私もそう思ったんだけどね……言ったらあれだけどジェーンさん、胸ないじゃない?ある程度あった方がいいんだけどあの人本当にないからこういうボディラインが丸分かりのやつはダメなのよね。だったらマーメイドラインかエンパイアライン、それかシャンパンドレス考えてるんだけど……」
玲央は仕事大好きな人だから仕事の話になると止まらない。別にこういう話は嫌いじゃないから苦じゃないけれど。
あぁあー、とか言いながらまた椅子に座り直しパソコンをいじり、スケッチブックに書き込んでいく。玲央のスケッチブックはデッサンでいっぱいだった。
『玲央嫌いなもの無かったよね……』
そう呟きながら玉ねぎやらピーマンやらケチャップご飯にぶち込み炒める。
で、炒めれたら卵薄く焼いて……
『はい、玲央。オムライス』
「わぁ、すごい!ちょうどボリュームのあるもの食べたかったの。ありがとう」
『いいえ、どうぞ?いただきます』
私が作ったご飯を美味しい美味しいと食べてくれる玲央を見るのが好き。というか、私のご飯を美味しいと言って幸せそうに食べてくれる人なら誰でもいいのかもしれない。
『えへへ、美味しいかい?』
「ええ。いつもは自分で適当に済ませちゃうから……こういうの、嬉しいわ」
頬が緩むのが自分でもわかる。
玲央は私のこういう顔を良く見るから嬉しいらしい。私としては恥ずかしいだけだからあまり見ないで欲しい。
そんな中私の携帯がなる。オルゴールの可愛らしいディズニーの曲だ。
『ごめんね、はい?あー、山岸さん?どうかしました?』
〈どこにいるのよー!〉
『今ですか?実渕さんの家にいます』
〈またぁ!?あんた、自分が歌手だって自覚してます?〉
山岸さんは口が悪いです。
〈写真撮られて報道されそうよ!ま・た!〉
『またぁ?本当に?嫌だなぁ……まったく』
〈早く来て!社長結構お怒りよ?2回目なんだから〉
『はいはい』
……山岸さん、電話で声を張り上げるのやめて欲しいんだよね。耳が痛い。キンキンするよ。
「フフ、山岸さん?」
玲央にはいつも愚痴聞いてもらってるから山岸さんのことはたくさん知っている。
もちろん、私が写真も見せてるから顔も知ってる。玲央曰くファッションセンスがないらしいが……それは山岸さんには言わないでおこう。
「あの人、相変わらずなの?私服」
『だって何も言ってないもん、私』
「言ったげなさいよ。……それより、また?」
『熱愛報道。あは、玲央とは何にもないのにね』
「ホントよ。あ、ご馳走様」
『はーい。お粗末様です。ご馳走様〜』
白くて大きな皿を重ねて持っていってくれる玲央は本当優しい。
仕事場の女性にモテるわけだ。
これが酔ったときの日常
そして私と玲央の日常的女子トーク
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