真っ白なフィルム | ナノ


  





大切な人と、大切な子。


「征ー、どこー?」
「ママー」
「はいはい」
「パパは?」
「どこ行ったんだろうねぇ。車あったからおうちの中かな?」
「ホント〜?」
「ママにもわかんない!」
「ええー」


目の前で表情をコロコロ変えながら笑うこの子は私の大切な子。小さくて思い切り抱きしめてしまえばプチッと潰れてしまいそうな、儚い存在。


「パパー?」
「どこ行ったのかな……本当に」


広くて大きい家の中。ちゃんと組まなく探したかと聞かれれば悩んで唸ってしまうかもしれない。
結局庭やらなんやらいろいろ探した結果、征は見つからず不安になったのか文香も泣き出してしまった。彼女は意外と泣き虫で何かあればよく泣く。
あやせばすぐ寝てくれるのだが。


「はぁぁぁあ、どこ行ったの。まったく」
「ここにいるけど?」
「はぁ?……何で出てこなかったのー?」
「少し寝ていてね」
「嘘。文香と遊ぶの疲れたんでしょう?」
「おや、バレてたか」


膝の上に丸まって寝ている文香は征そっくりで、赤い髪の毛なんて彼そっくり。瞳だって、赤色で。でも、唯一思うのは毛質なんかは私に似たのかなぁと思う。ふわふわで細くて、絡まりやすい毛質。
私の隣に腰掛けて文香の髪の毛に唇を落とす彼は残念そうに笑う。


「文香に盗られてしまったな、すっかり」
「何が?」
「光が文香に盗られたんだ。僕のなのに」
「ふふ、子供にヤキモチ焼いてるの?」


征が離した髪の毛を梳くように撫でる。その時に瞼が動いて勢い良く手を引っ込めた。
文香には悪いが折角征が隣に座っているのだから静かな空間に二人でいたい。文香が起きてしまえば征はそれこそ文香に盗られてしまうのだろう。


「そうだが、何か問題でも?」
「案外あっさり認めたね」
「はは、そこで焦れても何にもならないだろう。ヤキモチを子供に焼いているのは事実なのだから」


再び静かに寝始めた文香を抱き抱え彼女のベッドまで運ぶ。長い長期休み。久々に家族三人で過ごす空間。だが、それもたまには二人だけ、というものもいいだろう。


「ぅん……」




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