真っ白なフィルム | ナノ


  じゅうに


『え?』


〈せやから、同窓会的なやつやらへん?〉


『いつ?』


〈明日か明後日。あかん?〉


『…空いてるよ、今暇だし』


〈何やそれ。まぁ、大変やもんな、今。休暇かなんかもらった?〉


『そうそう。それで、澪。時間と会場は?』


電話がかかってきて誰かと驚き電話を取れば高校時代の友人、澪ちゃんだった。今は昔と違いちゃん付けはなくなっているが。
懐かしい関西弁。変わらない声。
全てが懐かしかった。
そのまま場所と時間、どうやら明日のようだが決まり、それからは世間話。


〈んんー、結婚なぁ……考え中〉


『まだ若いしね。考えて決断して』


〈わかってんねんけど……好きやねんでー?でも決断がな〉


『ふふ。結婚式は呼んでよ』


〈当たり前やろ!〉


―姫は結婚せぇへんの?


その問に固まってしまった。結婚何て考えてなかった。考えたくもなかった。
私が好きな人はもう結婚してしまった。今更新しい恋も何も、やるつもりはない。


〈姫?〉


『澪、もう私姫って言われる年じゃないんだけど?』


〈あ〜、本当やね。じゃあ何がいい?〉


『普通に呼んで』


結局私の答えは澪ちゃんには言わずに電話は終了した。
同窓会的なやつとはなんだろうか。いうか、的なやつって同窓会だよ?合コンみたいな?他校の男子呼ぶとか?


『わかんないよ』


赤信号で止まっていた車を発信させる。黒に近い青いそれは汚く汚れていた。私がそういうことを気にしないタチだからなのか、砂や泥、黄砂などで汚れている。
正直誰から見ても綺麗と言われる範囲ではないたろう。
帰ったら洗浄でもしてやろうか。ダメだ、洗ってやれないんだった。
私は現在ホテル暮らしとなっている。たまに家に帰るが、やはり未だにチラホラと取材しようと待ち構えている人もいる。


『……はぁ、疲れたぁぁぁあ』


ホテルについた途端バタンキュー。ふかふかのベッドに倒れ込んだ。
綺麗にベッドメイキングされていたシーツが波打つ。
別に疲れたからと言って何かをしているわけではない。ただ、読みたかった本を買いに行ったりショッピングに行ったり、ギターを見てみたり。
綺麗な赤いギターがあって欲しいと思ったが予算オーバーしていたので買わなかった。
ちなみに私が引くのはアコギだ。


『欲しかったな……』


好きだった$lの瞳と同じ色。あんなに明るい赤ではなかったけど、それでも、赤と言われてしまえば彼しか連想できない自分がいる。
今彼は何をしているんだろうか。
言葉で誤魔化してもダメなものはダメだな。好きなんだ、まだ。


『……同窓会か』


最近独り言が多くなり、声も大きくなってしまったのを気にしている。
それより明日、京都に行くより今行って向こうでホテルでもとった方が楽そうだ。
さっさと荷物をまとめて電車に乗り込むためにホテルから出た。


****


「父さん、どういうことですか」


「何がだ」


手に持っている写真を握りつぶす。
相変わらず、父は書類に目を通していてこちらを見向きもしない。


「僕と光の関係性についてです!」


「!……何の話だ」


「シラをきるつもりですか?この写真はなんです!」


握って皺くちゃになってしまったそれは僕と光が肩を並べて写っている写真だった。光は所々に怪我をしているようで、絆創膏を貼っていたり湿布を貼っている。見たところ7.8歳の時ぐらいだろうか。
それを父の机に叩きつけた。


「……誰だ?」


「光!白銀光です!」


「悪いが記憶にない。それに、その名は今問題になっている歌手だろう。会ったこともなければ話した記憶もないな」


「病室に来ていたアルビノの女性です」


「……覚えがないな。今忙しい。後にしてくれ」


また、この人はこうやってはぐらかす。でも、父は光のことを知っている。病室であった時に話していたじゃないか。
あの時の記憶は鮮明に覚えているさ。何故ここにいる、そう問うたのだ。僕の父親は。


「答えてください」


「聞こえなかったか?忙しいと言っている」


面倒くさそうに僕の顔を見たあとにため息をつく父。それから再び書類に視線を戻した。いつもそう。僕のことを見ることなんてない。聞くことなんてなかった。いつも自身で判断し、僕に有無を言わさず、ことを決めていった。
そういう性格が僕は大嫌いだった。


「僕は父さんのそんなところが大嫌いだ」


それは、今も昔も変わらない。僕はこの人を好きになれない。
それは、絶対に。


「もういいです。自分で探す」


「……そんなことしない方がお前の為であり、そいつの為でもある」


「……失礼します」


知っていて答えなかった父に腹が立つ。そして、仲間と同じようなことを言うのにも腹が立つ。何が分かるというのだ、そう聞きたいのに聞けない。
自分自身が一番分かっていないからだろう。僕だって、彼女の、光の何を知っている?
僕が知っているのは……彼女が玲央の友人で、僕の見舞いに毎日来てくれていた忠実な女性だということ。



彼の父は机に叩きつけられた写真を灰皿の上で燃やした。

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