もう一度始めてみませんか?



平々凡々、どこにでもあるであろう1日。


それが今日だ。あの1件からはや1ヵ月が経過しようとしていた。あの人からの連絡は一切は来ない。それでいいはずがないのだろうが、私はもうそれでよかった。平和で安心して落ち着いて生活ができたらそれでいいと思った。

「溝淵ー」
「何?」
「飯。っても簡単なもんだけど」
「いや、食わせてもらえるだけで幸せです。虹村の、旨いし」
「まぁ、お前のよりは数倍うまい自信はある」
「うっさい。これから上達するし」

簡単なものとかいいながら旨いもんだから羨ましい。最近ようやく料理サイトを見て食べれるものに上達下のだ。まぁ、ほぼ虹村のおかげだが。
自分じゃどれが簡単なレシピなのかわからないのだから、結局まだまだなのだ。発展途上とでも言っておこう。

「簡単なものって旨いし、何なの。タラコパスタ旨い」
「そーかー?普通だろ」
「私は美味しいんだよ」

夏休み、昼。今日は虹村は何も予定がなく柄にもなくゴロゴロとしている。バスケをいつもしているイメージが定着しているものだから、ゴロゴロソファで寝転んでテレビ見ているのが新鮮だ。いつもは帰ってきていろいろ支度して、飯作って部屋にひきこもり課題をして知らず知らずのうちに風呂に入って寝てる。

「お前、今から予定あんの?」
「バイト」
「……は?」
「何」
「お前、バイトしてんの?」
「してるよ。電車乗って一時間くらいかかるところだけどね。海の近くのカフェでバイトしてる」
「接客か?」
「接客」

パスタをペロリと平らげ食器を食洗機の中に突っ込む。何故か固まっている虹村。私がそんなに接客するのがおかしいのだろうか。

「……ついてくる?」
「…………いく」

虹村も食洗機に食器を入れ、自分の部屋に引っ込んだ。おそらく部屋着から着替えるのだろう。私も玲央プロデュースの服を来て、軽く化粧をする。
リュックサックに必要なものを詰め、それを背負い込む。

「虹村ー?準備できたー?」
「ああ、今行く」

玄関でスニーカーを履いて、一様忘れ物がないかを確認して虹村を待つ。

「わり、またせた」
「数秒だよ、待ったなんて言わないさ」
「それもそうか」

タイミングよく来たバスに二人で駆け込み乗車をし、座る。前と同じ、私が窓側、虹村が通路側。そして相変らず虹村は通路を挟んだ向こう側の窓の外を見ていた。


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