そんなに甘くないはずさ



目覚めた時にこんなに泣きそうになったのは初めてだ


目の前でそう言って頭を抱えているのは私の大切な幼馴染だ。何故こんなにも顔が青白いのか聞きたくなったがそういえば、と思い出した。そうだ、彼は昨日悪酔いをしてしまって気絶したのだと。
携帯を枕元において彼の青白い顔を見る。

「おはよう、赤司。それとも昔のように征ちゃんと呼んだほうがいいか?」
「やめてくれ。余計に頭が痛む」
「昨日間違って酒を飲んでたからね。風呂入ってさっぱりしてきな。もう酒も抜けてるだろ」

ふらふらしている彼を支えながら脱衣所まで案内する。虹村に途中会いおはようというと時計を見ろと笑われた。

「……12時だ。今日が大学の創立記念日でよかったねぇ、赤司」
「そうだな。頼むから耳元で話すな、頭に響く…」
「おや、それはすまない」

シャンプーは適当に使えと言って自分は台所で顔を洗う。虹村に怒られながら。こんなところで洗うな、なんて言ってくるものだから仕方のないことだと説明をする。

「あ、そうだ」
「何だ」
「今日休みだよな?」
「ああ」
「ちょっち買い物付き合って」
「は?面倒くせぇ」

とかいいつつ準備を始めようとしてくれるあたり、彼がよくわからない。これが所謂ツンデレってやつなのか。いや、知らんけど。

「何買うんだよ」
「いろいろだよ。荷物になるものも買うから付き合って欲しくてね」
「まともなもんか」
「反対に人を誘ってまともじゃないものを買いに行くやつがどこにいるんだよ」
「伊織、タオルはどれを使ったらいいんだ」
「あー行く行く」
「来るなっ!」

ちょっとからかっただけなのに。そうやって怒るから脳内血管がプチって行くんだぞ、赤司。なったことないけどさ。
そんな彼は風呂から上がりコーヒー片手に頭を押さえている。虹村が薬と水を渡して明日の話でもするのだろう。バスケの話題へと持っていく。さて、私も行く準備をするか。

「何がいるかな……えーコームと。おー、ゴールド系切れてるな。他は……ビーズ系もか」

某無印のメモ帳に書いていきそれをポケットに入れる。
今から行く人というに気を使う必要があるのだろうか。いや、さすがの虹村でもこの絵の具だらけの格好には引くか。さすがに何か違う服の方がいいよな。怜央プロデュースの服でも来ていこう。この間買ったヤツ。それに少しばかり化粧でもするか。

「って私は……何楽しみにしてるんだ……馬鹿か」

とかいいつつ新しいシャツに袖を通す限り、楽しみなんだろう。化粧と言っても適当に、だ。そこまでガッツリ化粧をするタイプでもない。今頃虹村は赤司とバスケの話で盛り上がっていることだろう。いつになってもバスケが好きなのだ、彼らも。少し、羨ましい。私も好きなことをのびのびとしたいものだ。

「伊織」
「うおっふぉい!?!?」
「俺はお前をいつ女と認識できるようになるんだ。それから大きな声をあげないでくれ頭が痛い」
「誰だって驚くわ。二日酔い平気か?」
「ノックはしたんだけど。まぁ、そこそこだよ。今日は家に帰って安静にしておくさ」
「そうするといいよ。悪かったね私の監督不行届で」
「もとよりお前には期待してないよ俺も注意不足だったからね。何も言えないさ」

今度からは赤司に酒、主に酎ハイを飲ませないようにしよう。故意に飲ませた訳では無いのだけれども。どうも本人は記憶が飛んでいるらしい。昨日のことは途中までしか覚えていない、と彼はいったのだ。今度からは本当に気をつけないとな。

「今日はこれでお暇させてもらうよ。悪かったね、迷惑をかけた」
「気にすることはないさ、お互い様だ」
「そうだな、お前はいつも俺に迷惑をかけてばかりだ」
「酔っててもほっぽっとけば良かったな」
「冗談を」

そう言って笑った赤司は虹村と私に頭を下げて行く。虹村が結構心配していた。そりゃ、後輩だし酒飲ませてしまったし心配くらいはするか。
送っていこうか、その問に赤司は首を横に振って出ていった。

「さて、俺らも行くか」
「んー。よろしく」
「へーへー。めんどくせぇわ」
「ごめんって」
「ぜってぇ思ってないなお前それ」
「そんなことないって」

ポケットに入っている携帯が震えた。


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