桃色の純情



虹村うるさいーっだ。っあははは!


目の前で幸せそうに笑っているのは私の尊敬している先輩でした。


同じ小学校だった。中学も同じで驚いた。向こうは私のことなんて知らなかったみたいだけれど、私は知ってた。理由は先輩がコンクールに出した絵。デカデカと廊下に張り出されてその時は凄いなぁ、なんて思いながらその絵を見上げてた。子供じみた感想。でも私はそう思ったの。だって本当に凄かったから。

「溝淵伊織さん、卒業おめでとう」
「あ……」

卒業式で名前を呼ばれた先輩は何度もコンクールで賞を取っていた。だから名前は知ってたし、顔も一応知ってた。自分の絵が廊下に張り出されて嬉しそうにしていた溝淵伊織さんは私の中では凄い人、だった。
中学に入った時に初めて話した。その時すごく心臓が脈打っていて緊張した。何でだろうね、尊敬してたからかな。

「あの、」
「ん?あー、どうかした?」
「小学校、同じで、その……えっと」
「お、マジ?そっかそっか。同じだったか」

気さくな人だ、と思った。それから笑顔が素敵な人だって。歯を見せて照れるように笑ったその顔が可愛かった。伊織先輩と同じクラスで私の先輩である虹村先輩と仲がいいのか、いっつも彼らは一緒にいた。男女の友情ってあるんだ、そんなことを考えてたと思う。

「今日、楽しかったねぇ大ちゃん」
「おー」
「ちょーっとお酒飲んでないよね?」
「飲んでねぇよ。そこまで馬鹿じゃねぇし」
「そっか」

バスケ部に見学に来ては体育館の床に座り、しきりに何か描いていた。多分虹村先輩を描いていたはず。目線の先にはいつも虹村先輩がいたから。

「またやりたいねぇ」
「俺はもうゴメンだ」
「えー?何でー?」
「あんなラッブラブな空間行きたかねーよ」
「あはは、大ちゃんもラッブラブとか言うんだ?」
「ああ?」
「なーんでもっ」

私が笑うと大ちゃんは最近鼻で笑ってくる。やめてって言ってるのにね。
虹村先輩と伊織先輩はどういう経緯があって1つ屋根の下で暮らすのかは知っている。そしてその不可能を可能にした人物のことも知ってる。だからこそ、こんなハプニングのような仕込まれたようなものでも2人には幸せになって欲しかった。お互い今は友達として見てるかと知れない。だって、本当に男女の友情ってあるんだ、なんて思ったんだもの。でもそれでも、

「幸せになって欲しいなぁ」
「なんか言ったか?」
「何でもなーい」

きっと2人は幸せになる、なんて夢を見たい。これは女の子特有の思い込みであり押し付けだ。


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