Happy Birthday



まわりの女子生徒が浮き足立っているのは何故だ。


あ、虹村の誕生日か。
それにしてもギャーギャー、じゃないか。キャーキャー黄色い悲鳴あげて虹村を歓迎するのやめたげて。切実にあの輪の中心にいる虹村がかわいそうに見えるから。笑顔引きつってるし。

「お誕生日おめでとう!これ受け取って」
「おめでと!」
「あの、こ、これ……お誕生日おめでとうございます……」

と元気に言う子や、明らかに下心ありありだろうという子。恥ずかしそうにプレゼントを渡している子だっている。それをちゃんと受け取って、礼を言っている虹村は本当に律儀。でも笑顔引きつってるけど。

「溝淵!」
「んー?何?」

口パクでhelp!と言っているのがわかった。携帯を構えてシャッターを切る。ああ、怒ってる怒ってる。その顔も勿論携帯の中に納めてピースをしてやった。

「助けろよ!」
「まぁまぁ、そんなに怒らなくても」

十分休み、前の席の椅子に逆向きに座っている虹村はそう言って私の額にデコピンを一発、強烈なものをお見舞いしてくれました。
悶絶するような痛み。

「痛いなぁ!今描いている絵のイメージ消えたらどうしてくれんのさ」
「いや、俺の知ったこっちゃねーよ」
「うわ、酷い」
「お前もおんなじようなもんだろ」

相当根に持ってるらしい。そんな男は持てないぞ、そう言ったらきっとまたデコピンが来るからやめておく。
しかし、周りの女子の目がすごく気になるんだけれど。虹村といるから?誕生日だから特別?申し訳なくなってくるな。

「てかお前は?」
「何が?」
「俺になにか言うことは?」
「え、ないよ」
「はぁ?」
「何。怖い怖い顔怖いよ〜」

唯でさえ睨んできたら人相悪いのに、恐ろしいって本当に。まぁ、こういう人間だとわかって付き合っているから全然いいしむしろウェルカムだけれど。

「私が言わなくてもほかの人に沢山言われてたし、いいでしょ」
「わかってるなら言えよ」
「えー、面倒い」
「面倒いの使いどころちげーし」
「いや、あってるから」

どちらも中1からの付き合いだが、誕生日おめでとうなんてそういえば言ってなかったなぁ。三年生になってようやく気づく私。
一年の時は知らなかったし、こんなに大騒ぎのものではなかったので知らないのは当たり前。終わってから知った。
二年生の時はたまたま学校を休んだ。考査明けで疲れて熱を出したのだ。そのまま何も言わず誕生日は終了。
そして三年生今。言うのが何故か気はずかしい。

「……」

「伊織ー!こっち来てー!」
「んー!」
「待てよ」

パシリと腕をつかんだ君は何故そんな顔をしているんだ。

「……おめでとう」

そう言えは花が咲いたように笑った虹村。ああ、なんて笑顔を向けるんだ。不覚にもキュンとしてしまったじゃないか。

「サンキューな」

「どういたしまして」

中3の誕生日、初めて彼の誕生日を祝った。


「ってことがあったねぇ」
「は、良く覚えてんなそんなこと」
「え、虹村覚えてないの?」
「覚えてらぁ」
「ふーん。誕生日おめでとう」
「……おう、サンキュ」

目が覚めておはようと言って、ご飯を一緒に食べる、そんな一日。いつもはおはようなのに、この会話。頬が緩んだのはきっと、お誕生日おめでとうと言える人が隣にいてくれるからだ。


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