アルバイトは居酒屋。近いところにあったから行ってみればいいよーとふたつ返事で承諾してもらった。
まぁ、簡単な質問はあったもののこんなに面接簡単でいいのかと思うほどだ。もしや、ブラックなのかここは……。
なんてことはさておき、荷解きは終了。まあ、ここまで来るのに3.4日かかった。短いのか長いのか、引越しが初めてな私には分かるまい。
荷解きを終えて一度大学まで徒歩できちんと行ける距離なのか(物件探しの時に徒歩10分で大学につきます!という張り紙を私は忘れない。)携帯で地図を見ながら歩いていけば本当に10分で着いた。この物件案内してくれたお兄さんありがとう。ここは本当に優良物件だ。
駅は自転車で15分弱で、思っていたよりも近かいのが何よりも嬉しかった。交通の便もよし。最高だ。

『あ……』
「あー、こんにちは」
「こん、ちは」
「何、ゴミ出し?」
「は、い」
「あー、俺も行く。待って」

なんで待たなきゃならないんだろうか。しかも苦手な人を。しかも私の乳のサイズを知っている人を!!
扉がしまる直前、見えた玄関は靴が散乱しておりお世辞にも綺麗とは言えないものだった。以外だ、綺麗好きそうなのに。
でもまぁ、たしかに帰ってくるのはこの人遅い。片付ける時間なんておそらくないのないのだろう。遅くて2時とか私がレポートを終わらせてさぁ寝るぞ、なんて時間に帰ってくる。そのくせ家を出るのは朝の5時頃。昨日目が覚めてしまった時に出ていくのが聞こえたのだ。それが5時頃。この人はいつ寝ているんだろう。身体、大丈夫なのだろうか。
って私はなんで心配してるんだろう、やめよやめよ。

「ゴミありすぎて袋持ちきれなーい」
「それ、遠まわしに手伝ってって言ってます?」
「言ってるかもネ」
「はぁ……ってうわ」

カップラーメンカップうどんにカップ焼きそば、たまにお弁当。まぁまぁ、すべてインスタント食品。ていうかコンビニ一色。
この人大丈夫か。絶対大丈夫じゃないだろう。マジで身体心配だわ。

「んだよ、人様の食事に難癖つけるなよ。いそがしくて作ってる暇ないんですぅ」
「そんなに忙しいんですか?」
「まーね」
「大変なんですね」
「本当にな。もーやめてぇー」
「やめたらいいじゃないですか?」
「いいねぇ、そういう単純思考だった学生に戻りたいわ」
「バカにしてんですか」

スリッパに素足だった黒尾さんの足を踏んでやれば大袈裟な声を上げた。多分大袈裟じゃなくてかなり痛かったはずだ。
ごめん、と心の中で謝る。体重計であとで体重測ります。

「お前、大人への敬意をどこに捨ててきたんだよ」
「敬意を表する大人なんて今どこにもいないですから」
「お前を育てた親が見たいわ」
「私これでも外面はいいんです。高校教師にも大学の先輩やら教授にも愛想がいいと言われ続けました」

現在進行形で言われ続けています。
そう言ってゴミ袋をつかみ直す。
インスタント一色のゴミ袋をつかみ直して階段を降りる。エレベーターがマジで欲しいくらいだ。ちょっと優良物件だがここだけがネックだ。『エレベーターがない!』まあ、3階建ての2階に住んでるから別にそんなに負担はないんだけど。

「あー、重たいし臭う」
「臭うか?」
「臭いますよ。絶対オジサンの部屋臭いでしょ。やめてくださいよ、臭いがベランダから伝わってこっちに来るとか」
「臭くねぇよばーか。でもまぁ臭いは……有りうるかもな。ゴミ袋ベランダに出してあったし」

ニヤリニヤリと笑う彼の足をもう一度踏みたいくらいだ。臭いが移るなんて最悪でしょう。

「はぁ!?やめてくださいよ、洗濯物に臭い、移るじゃないですか」
「俺には関係ねーしー」
「訴えますよ、オジサンのこと」

ようやく着いたごみ捨て場に袋を置いて手を叩く。掌は黒尾さんのせいで赤くなっている。それだけ重たかったんだよ。か弱い女の子にこんなもの持たせるなんて最低ね、本当に。

「なぁ」
「なんです」
「オジサンってやめてくれ」
「大丈夫、心の声は黒尾ジサンって呼んでますから」
「もうオジサンでいい」
「ぶふっ、でしょ。でもナイスなネーミングだと思いません?黒尾ジサン。ぶふっ」
「自分で言って自分でウケんな」

私のデコを軽く叩いた彼の手のひらは固くて痛かった。鍛えてるんだろうか、離れていくその手のひらは豆が潰れたような跡があった。オジサン何かにはキュンってしないので七分袖から伸びてるたくましい腕にしっぺをしてやった。案の定大袈裟に痛がるその顔が最高に面白かった。


。。。
この間一瞬で受かったバイトがめっちゃめちゃブラックで倒れました……マジであそこもう行かん。
私ちなみに引っ越した時、荷解きに1週間掛かりました。



オジサンとゴミ捨て

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